たくましさを増したプリキュアの2人

 一方のプリキュアはどうなのか。主人公のなぎさとほのかは同じクラスだが、違うグループに属している。だからお互い「顔は知っているけれど……」くらいの距離感。そんな2人は、ひょんなことからメップルとミップルという“光の園の住人”と出会う。導かれるように街を歩くうち、敵に遭遇してしまう。

 またも「なんのこっちゃ」と事態が飲み込めないままプリキュアに変身して戦闘に入るが、ここからがセーラームーンと大きく違う。

 ばっちばちの肉弾戦なのだ。なぎさが一発目にもらう打撃は、まさかの顔面へのパンチ。ほのかは足首をつかまれて、ぶん投げられる。それでも、パワーアップした2人はケロッとした顔で敵を圧倒。ほのかは華麗に二段蹴りを披露し、なぎさなんて、最強のラグビー選手・オールブラックスも顔負けのタックルを決める

 1話で彼女たちが使う魔法は、トドメの「プリキュアマーブルスクリュー」だけだ。あとはすべて“肉体で語る”スタイル。もはや魔法少女というより、女子プロレスラーの長与千種とライオネル飛鳥のタッグチーム「クラッシュ・ギャルズ」に近いのである。

 つまり、両者を比べてみると、'92年のセーラームーンに比べて、'04年のプリキュアは“たくましさ”を増しているのである。この12年間で、だんだんと女性が強くなったことを象徴しているのではないだろうか。

 そして、現在は2021年。『美少女戦士セーラームーン』から29年、『ふたりはプリキュア』から17年がたった。セーラームーン世代はアラフォーに、プリキュア世代は20代半ばに差しかかったころだろう。

「幼いころに見たアニメは性格を左右する」と、私は本気で思っている。そう考えると、現代において女性が強く美しく自立している姿をみるたび、その背景に「戦う魔法少女」を感じてしまうのである。

(文/ジュウ・ショ)


【PROFILE】
ジュウ・ショ ◎アート・カルチャーライター。大学を卒業後、編集プロダクションに就職。フリーランスとしてサブカル系、アート系Webメディアなどの立ち上げ・運営を経験。コンセプトは「カルチャーを知ると、昨日より作品がおもしろくなる」。美術・文学・アニメ・マンガ・音楽など、堅苦しく書かれがちな話を、深くたのしく伝えていく。note→https://note.com/jusho