いじめや嫌がらせが蔓延しているのは、相談員の間だけではない。関東地方のハローワークで働く非正規の事務職員・土屋唯さん(仮名=40代)の体験が、それを裏付ける。

「ゴミ出しなどの雑用をするのは私だけ。ゴミを机の上に置かれていたこともあります。電話対応も私ひとりに押し付けられています。コロナで逼迫した求職者からの電話も非常に増えていますが、研修も受けていないのに、助成金の申請方法や就職支援に関わることなど、専門知識が必要な対応をしなければならないんです。一方で、仕事をよそに私的なおしゃべりに時間を費やし、高給を得る職員もいる。こんなの変だと言ったら、さらにひどくなりました」

「気に入った非正規だけ露骨に優遇する正規職員も」と土屋さん
「気に入った非正規だけ露骨に優遇する正規職員も」と土屋さん
【写真】グラフで一目瞭然、コロナ禍で激増する非正規相談員

 雇い止めを前提とした公募制度があるから、非正規同士の対立を招き、パワハラが生まれやすい土壌となる。そう土屋さんは考えている。

女性だから非正規&低賃金でかまわない!?

 ハローワークの相談員をはじめ、DV被害者支援、保育や介護など、人のケアに関わる仕事を担う公務員には、非正規の女性たちが多い。これは偶然ではない、と前出のジャーナリスト・竹信さんは強調する。

「生活に関わる重要な仕事をしているにもかかわらず、彼女たちの多くは低賃金で不安定な働き方です。その背景には、家事や家族の世話を軽くみて、無償で女性に押し付けてもいいとする“家事ハラ”的な価値観があります。女性が家でタダでやっているような仕事に、そんなにお金(国や行政の予算)を出せないと言った行政担当者もいます」

ネット署名を募り、公募制度の改善を求めて要請活動も行われている
ネット署名を募り、公募制度の改善を求めて要請活動も行われている

 夫の稼ぎがあるから、女性は非正規の低賃金でもかまわない。雇い止めにあっても、夫の扶養に入っているなら困らないはず……。そうした思い込みは根深いものがあり、“安く買いたたかれるのはおかしい”と思った女性の声を上げにくくさせる風潮を作り出している。

「女性か男性かではなく、仕事の能力や、相談支援など提供するサービスの質で、正当に評価してほしい」

 そう本間さんは願ってやまない。

 さらに竹信さんが言う。

「相談業務などの対人支援サービスは、行政と住民をつなぐ最初の窓口。そこで非正規女性が多くなり、低賃金で不安定な働かせ方や、パワハラが蔓延して働きづらい環境になると、結果として住民は質の高いサービスを受けられなくなります。すると行政への不信感が増し、公務員を減らせというバッシングに拍車がかかり、さらに公共サービスが縮小されるという悪循環に陥っていく。非正規相談員をめぐる問題は誰にとっても無関係なことではないのです」