ダウンタウンも認めたセンス
「ダウンタウンと同級生だった放送作家の高須光聖さんに聞いたことですが、中学生のころ、浜ちゃん(浜田雅功)が、いがらし先生の漫画を見つけてきて、松っちゃん(松本人志)や高須さんに見せて“いがらしってやつすごいぞ”ってなったという逸話があるんです。
なにせダウンタウンの初ワンマンライブのタイトルは『かかってきなさい ダウンタウンショウ』。先生の作品のひとつ『かかってきなさいっ』という漫画のタイトルからきているそうなんです。先生は、そういう笑いの天才たちから見てもすごい人だったんですよ!」
辻井氏はいがらし先生の先見性にも脱帽させられるという。
「例えば、『ぼのぼの』に登場するキャラの家族構成は父子家庭ばかりです。ぼのぼののお母さんが亡くなったことは41巻で明かされたのですが、それまでは、“なぜお父さんだけあんなに子育てに一生懸命なんだろう?”って、読者の方は思っていたのではないでしょうか。
それに、アライグマくんのお父さんは一人で家庭をまわしているが、お母さんは遊び呆けている。でも、それが『ぼのぼの』の世界では許されていたりとか。
こういった描写は、これまで日本の固定概念としてあった、女性は家庭に入って家事をしなければいけないっていう古い考え方を覆すような設定だと思うんです。そういった感覚が35年前から先生の中にはあった。
こういう固定概念を壊す先見性を見せつけられると、“そのへんのギャグ漫画とは違いまっせ”って思うじゃないですか」(辻井氏)
この“先見性”こそ、35年間そばで見守ってきた辻井氏が思ういがらし先生の強みのひとつなのだろう。そして、そんないがらし先生の先見性は、コロナ禍でピリピリとしている昨今の社会にも向けられているようだ。
「コロナ禍で家にこもっている時間が増えたので、私もいろいろ考えました。ネットで何か始めるかもしれない。YouTuberになるかもしれないですよ(笑)。
私がではなくて、ぼのぼのがYouTuberになるという展開もあるかもしれません。次のスピンオフはぼのぼのがYouTuberになる『ぼのチューバー』かもしれない(笑)。今までにない切り口で、『ぼのぼの』の世界を膨らませられないかなと考えているところです」(いがらし先生)
35周年を迎えてもなお、新展開に意欲を出すいがらし先生。広がり続ける『ぼのぼの』の新たな世界観にも期待したい。
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開始日:2021年7月2日(金)発売・販売元:(株)竹書房
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期間:2021年5月29日(土)~6月13日(日)時間:11:00~20:00
場所:渋谷マルイ7Fイベントスペース
特別展『ぼのぼの連載35周年記念 ぼのぼのたちの杜』
期間:2021年9月18日(土)~11月28日(日)
場所:仙台文学館にて
(文=海老エリカ〈A4studio〉)