こうして「インテリジャニーズ」としてその名を知られるようになった阿部亮平は、『ザ・タイムショック』(テレビ朝日系)、『東大王』(TBSテレビ系)など、有名クイズ番組にたびたび出演し、好成績をあげている。
また、この阿部の台頭に引っ張られるように、ジャニーズJr.の「高学歴ジャニーズ」もしばしばクイズ番組に登場するようになっている。たとえば、2021年3月29日放送の『クイズプレゼンバラエティーQさま!!』(テレビ朝日)の特番には、ジャニーズJr.の公式エンタメサイト「ISLAND TV」のなかの企画で結成された「ジャニーズクイズ部」の面々が出演した。
出演した部員は、阿部亮平に加え、青山学院大を卒業し、宅地建物取引士の資格も持つ川島如恵留(Travis Japan)、慶應義塾大学経済学部在学中の那須雄登と立教大学法学部在学中の浮所飛貴(いずれも美 少年)、早稲田大学創造理工学部卒業後同大学院に進学した本高克樹(7 MEN 侍)、国公立大(大学名は非公表)に通う福本大晴(Aぇ! group)の計6名。現在は、彼ら個々でも、クイズ番組や情報番組への出演が増えつつある。
「高学歴ジャニーズ」活躍の背景
新世代の「高学歴ジャニーズ」の特徴は、このようにクイズ番組を中心に活躍が見られるところだ。
その背景には、知識や知性がエンタメの中心的要素になっている、いまのテレビのトレンドがある。伊沢拓司らをはじめとした「東大生タレント」の活躍ぶりは、その端的な例だ。また京都大学出身のロザン・宇治原史規や同志社大学出身のメイプル超合金・カズレーザーのような「高学歴芸人」の存在も同様だ。
歌とダンスだけにとどまらない、ジャニーズのマルチタレント化は、1990年代以降SMAPらの登場によって顕著になった。櫻井翔は、その流れを汲みつつ、「高学歴ジャニーズ」のパイオニアとして報道番組に進出した。そしてその後に続くように、2000年代の「高学歴ジャニーズ」たちも、報道番組や情報番組においてキャスターやコメンテーターとして活躍するようになった。
これに対し、現在の「高学歴ジャニーズ」新世代は、いま述べたように、クイズをはじめとする知的エンタメの隆盛によって、報道などの硬派な番組だけでなく柔らかい娯楽番組にも活躍の場を広げている。
つまり、知識や知性は、いまや芸能人のスキルとして重要なものになっている。そのなかで「高学歴ジャニーズ」は、従来のジャニーズのイメージとのギャップからくる新鮮さもあり、重宝されているのではないだろうか。ジャニーズにとっての新たなフロンティアを開拓する存在になった「高学歴ジャニーズ」。ジャニーズの行く末を占う意味でも、その動向から今後も目が離せない。
太田 省一(おおた しょういち)Shoichi Ota 社会学者、文筆家
東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得満期退学。テレビと戦後日本社会の関係が研究および著述のメインテーマ。それを踏まえ、現在はテレビ番組の歴史、お笑い、アイドル、歌番組、ドラマなどについて執筆活動を続けている。著書として『攻めてるテレ東、愛されるテレ東』(東京大学出版会)、『平成テレビジョン・スタディーズ』(青土社)、『テレビ社会ニッポン』(せりか書房)、『芸人最強社会ニッポン』(朝日新書)、『SMAPと平成ニッポン』(光文社新書)、『中居正広という生き方』『木村拓哉という生き方』(いずれも青弓社)、『紅白歌合戦と日本人』(筑摩書房)などがある。