高齢者の接種率はいまだに半分以下
驚くべきスピードで接種が進んではいるが、6月21日時点で高齢者に限ったとしても、国内の接種率はいまだ半分以下にすぎない。そして64歳未満に関しては、一部で「やっと接種券が届いた!」という段階だ。
ご存じのとおり日本の接種の方針は、「まずは医療者などリスクの高い人を優先し、その後、高齢者さらには基礎疾患のある人……」という形で、先のWHOの方針に近い。国も、学校での集団接種について「現時点で推奨するものではない」としている(6月22日時点)。
もし、いま子どもへの接種に迷っているなら、一度判断を保留してもよいかもしれない。いま接種の対象となっている高齢者、そしてその後に続く自分たちの世代の接種率を高めるために、個人としてできることはいくらでもある。
移動に困難を感じている高齢の知り合いがいれば、通院に手を貸してあげると感謝されるだろうし、何より役に立つのは親世代である私たち自身がしっかりワクチンを接種することだ。
成人の接種率が十分に高まれば、子どもの感染そのものが起きにくくなると期待できるし、少し待てばアメリカなどで子どもへの接種が進み、副反応のデータも明らかになっているはずだ。
国内で成人への接種が進み、データが見えてくるまで短くても2~3か月はかかってしまうだろう。子どもにも接種したほうがよいのかどうか?について考えるべきは、そのあたりが適切かもしれない。
幸か不幸かワクチンの接種が世界のトップランナーからは遅れている(とはいえ国際的な平均値から見れば猛烈なスピードで接種しているわけだが)日本だからこそできる「待ち」の態度。それも現時点では有益だろうと、個人的には思っている。
子どもへの接種、親たちの意見〈編集部アンケートより〉
「長期的な安全性が見えないから、私自身も打たないし子どもにも打たせたくありません。ただ、ワクチン接種をすませた実家の母(78歳)からは“なぜ打たせないの? 変異株は子どもも重症化するといわれているのに。親子ともども早く打ったほうがいい”と強くすすめられています。母を安心させたい思いもあるけれど、子どもの健康、命も心配。決断できずにいます」(49歳・子ども13歳)
「10代以下では重症、死亡のリスクは少ないから子どもには打ちません。子どもが万が一、罹患した場合に早期治療が受けられる医療体制が整うこと、早く治療薬ができることを望みます。それまではマスク、除菌といった対策で子どもの体調を管理していこうと思っています」(48歳・子ども12歳)
「近くに高齢の祖父母もいるし、子どもにも早く打たせて家族みんなで安心したい。ただ、夫のほうが慎重でなかなか説得できず。コロナワクチンの話題になると、夫婦のあいだに微妙な空気が流れます」(35歳・子ども12歳)
「大学1年の息子は学校から、高校1年の娘は地元の市役所から通知がきました。自分自身も会社で今月末に1回目の接種をすませるつもり。将来、家族で海外に移住を考えているので、ワクチンを打つことに躊躇はありません。ウイルスを人からうつされず、自分からもうつさないために、接種は必須だと思っています」(50歳・子ども19歳、16歳)
市川衛さん……一般社団法人メディカルジャーナリズム勉強会代表/広島大学医学部客員准教授。'00年東京大学医学部卒業後、NHK入局。医療・福祉・健康分野をメインに世界各地で取材を行う。'16年スタンフォード大学客員研究員。'21年よりREADYFOR(株)室長として新型コロナ対策などに関わる