1DKの部屋でチワワを15匹、自ら死を選んだ飼い主
孤独死の原因は突然の病死や老衰だけではない。自ら命を絶つ飼い主も……。
「1DKの部屋でチワワを15匹、飼っていた男性がいました」(高江洲さん、以下同)
男性はトイレで練炭自殺、チワワは生きたまま残された。数か月後、異変に気づいた管理会社が変わり果てた男性とチワワの亡骸を発見した。かろうじて生きていたのは2、3匹だけだったという。
「管理会社の話によるとチワワ同士が共食いをしていた痕跡もあったそうです」
また、動物愛護関係者によると飼い主が孤独死した多頭飼育崩壊の住宅で、痛ましいことに動物がその飼い主の遺体の一部を食べて生きながらえたケースもあったという。
「孤独死現場に残された動物はみんなかなり気が立っています。気がかりなのは飼い主を亡くし、亡骸とずっと過ごしていた動物たちが保護されてもこれまでのような普通の生活を送れるのかということ。過酷な状況を経験した動物が新しい仲間とも仲よくできるのでしょうか」
こんな話もしてくれた。
「部屋の片づけや清掃をしているとき、残されていた猫が私たちの作業をずっと見ていることがあるんです。私たちに見えないものを見ているのでは、と思ったり、飼い主がいなくなり寂しくなったのか、偲ぶ気持ちがあるのかと思ったり。エサをくれる人がいなくなって悲しがっているのかと考えたり……でも、猫にずっと見られているとなんだか悪いことをしている気がして罪悪感が芽生えるんです」
動物にも訴えたいことがあるのだろうか。残された動物たちも深く傷ついている。
飼い主の亡骸とともに狭い部屋に閉じ込められ、飢えと渇きに苦しめられる。腐敗していく飼い主を前になすすべもなく、己の命の灯が消えるのを静かに待つ……。
特に犠牲になることが多いのが猫だという。高齢になると大型犬の世話は難しく、小型犬や猫など室内で飼える動物を選ぶ傾向にあるからだ。
「孤独死と多頭飼育崩壊の件数は増加していると実感しています。飼い主の死去以外にも病気や認知症が進行し、意思疎通ができない、入院してしまい動物が飼えなくなったなどのケースも増えています」(川崎さん)
その根底にあるのは『孤独』だ。前出の飯田さんは、
「特に高齢者、生活困窮者、精神疾患を抱える人に多頭飼育をする傾向がみられる。周囲とのコミュニケーションが取れず、社会から孤立。親族ともトラブルを起こし、見放されている人もいます」
家族がいても入院していたり、遠方暮らし。友達もいない。孤独な心のよりどころとして動物を選ぶ。
とはいえ、なぜ手に余る数の動物を飼うのか。前出の川崎さんが解説する。
「ひとつは避妊去勢手術をしないため増えてしまう。次に高齢化や認知症、精神疾患などから判断力がなくなる。病的なほどに猫や犬を際限なく増やし、飼えなくても“手放したくない”と訴える人ばかりです」
動物は手元にさえいれば、死んでも構わないという身勝手極まりない飼い主も多い。
「飼い主は数も把握できていないのにいなくなることは恐怖なんです。動物はエサも水も満足に与えられない、トイレだって汚いまま。具合が悪くても病院にも連れていってもらえない。彼ら、彼女らにとって動物は生きているものとしての認識がなく所有欲、物欲を満たすだけの物、命ではない。向けられるのは歪んだ愛情です」(飯田さん)