個人名義のマンション購入が意味すること
2020年に『婦人公論』で林真理子センセイと対談した際、保奈美は豪邸に住みながら、自分の部屋がないことを明かしています。自室がないことを不満に思うのは、ある種の“目覚め”を意味するのではないでしょうか。英国を代表する女性作家、ヴァージニア・ウルフが書いたフェミニズムの名著『自分だけの部屋』には、「女性が小説を書くためには、お金と自分だけの部屋を持たなければならない」と書かれています。お金と部屋を持とうとすることは、女性の自立のシンボルなのです。
単なる偶然でしょうが、『女性セブン』(1月28日号)によると、保奈美は昨年9月に都内の一等地に個人名義でマンションを購入したと報じられています。子育てが終わった女性が自分のために生きようと思ったとき、絶対に必要なのは仕事(お金)、反対に不要なのは、滅私を強いられる“妻”の部分ではないでしょうか。三行半というと言葉は悪いですが、今の保奈美に石橋は必要なくなったのかもしれません。
今回の離婚劇の主人公を石橋に見立てるのなら、「ひとりの青年が芸能界に入り、スターになって糟糠の妻と子どもを捨てた。人気絶頂の女優と再婚するも、自分の人気に陰りが出たら、女優妻に去られてしまった」という諸行無常の『平家物語』だと見ることができるかもしれません。反対に保奈美を主役に据えるなら「独身時代はトップ女優だったが、結婚を機に家庭に入った。しかし、復帰してみたら、自分は女優をやるために生まれてきたとわかった。子育ても終わったことだし、夫を捨てて仕事に邁進する」というフェミニズム小説だと見る人もいるでしょう。物語性の強い人生を送るのは、スターの証だと思います。
テレビを追われた石橋はYouTubeに転じ、結果を出しています。地上波で石橋を見る日も近いのではないでしょうか。保奈美も今後は女優だけではなく、女性のオピニオンリーダーもしくは作家として名を成すことが予想されます。
ひとつ言えるのは、スターの二人には、結婚という地味な毎日の連続は向いていないということ。これからはスターとしての本分を全うして、私たちを楽しませてほしいと思います。
<プロフィール>
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に応えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」