今回、念願だった高畑淳子(66)との舞台初共演が実現した。高畑は夫とパン店を営む倹約家のサツキ役で、篤子が気を許せる友達を演じる。

同学年なので同じものを読み、同じテレビ番組を見て、同じ舞台を見て育ってきていますから話していても楽しいです。まじめな方で、すでにセリフもすべて覚えてる。私はまだですけど(笑)。血液型が高畑さんはA型、私はO型。役柄同様に対照的かも」

 歌と踊りで資金がないことへの自虐的な演出は、見どころのひとつ。

「歌も踊りも大好きなので、それを高畑さんと一緒にできるのがうれしい。共演者がダンサーとしてバックで踊るのも楽しみです。

 ちょっと苦痛なのはセリフ覚えです。日常会話なので似たセリフが多くて苦労しています。高畑さんは、本読みのときに私のセリフを知らないうちに録音していて、家事をしながら毎日聞いて自分のセリフを練習されているそうで、いい方法だなと。私もやってみたいけど録音をしそこねていますから(笑)、別の機会に試してみます」

演劇界のゴッホを目指すつもりで!

 演出家でもある渡辺が、演出される側で心がけているのは?

「まずは言われたことをやってみて、違和感があったときに質問をして話し合って変えたりしています。

 今回の舞台でいえば“ただいま”と帰ってきたときに手を洗わなくていいんですか? 洗いましょうというようにアイデアを出しながらやっています。自分の部屋がない主婦が荷物をリビングのどこに置くのかとか。家庭劇なので見てくださる観客の奥様方に、あれはありえないと思われないようにリアルにやろうとしています」

 劇団運営は決して楽ではない。それを率いて40年以上、原動力や魅力を苦笑しながら明かしてくれた。

「人生はお金だけなの? と思うんですよ。

 ゴッホは描くなと言われても描いていた人です。だけどゴッホが描いたから、いま私たちは名画を鑑賞することができるわけですよ。

 私も演劇界のゴッホを目指すくらいのつもりでいたいです。私の芝居を見たいと言ってくれる方がいるかぎりお金にならなくてもやり続けますよ」

 演劇への矜持は揺るがない。

ジュリーは“半身”

 ジュリーこと沢田研二の大ファン。小学校6年生のときにテレビで見た瞬間に「この人が私の半身だと思いました」と以来、憧れの存在に。毎年コンサートに足を運ぶ。

「ジュリーを超える人がいない。そういうファンはいっぱいいると思います。性格がいい、掃除も得意で手伝ってくれそう。勉強好きで読書家、物知り。自分で作詞作曲もでき音楽や絵画にも精通している。原発反対で社会的思想も持っていて、そういう人はなかなかいないと思います」。YouTubeでジュリーの歌を聴きながら寝るのが日課になっている。

『喜劇老後の資金がありません』
(東京・新橋演舞場で8月13日~26日、大阪・松竹座で9月1日~15日)