「当たり前のこと」に安全意識のレベルが現れる
人間がやることである以上、「ヒューマンエラーは起こるもの」と清水さんは言う。
特に繁忙期はイレギュラーな対応が増え、安全確認を忘れるミスに結びつきやすくなる。ディズニーランドやユニバーサルスタジオでの勤務経験がある清水さんも、過去に安全バーの下げ忘れに気づかないミスを起こしてしまったことがあると言う。
「水に濡れるアトラクションだったので、お客さんに“座席の水滴を拭いてほしい”と頼まれたんです。そのため座席を拭くことに気を取られ、安全バーを下げることを見落としてしまいました。
ただ、すぐに先輩スタッフが気づいて非常停止ボタンを押し、事故を防ぐことができました。スタッフ同士で意識して、お互いのミスを注意し、補い合うことの重要性を痛感しましたね」
遊園地やテーマパークでの安全対策を考えるうえで、利用者である私たちにも判断可能なポイントがある。
「注意書きの文字の読みやすさ、身長制限バーの足場がしっかりしているかどうかは、ひとつの指標になるかと思います。スタッフによる丁寧な安全確認がなされているかもポイント。スタッフの身だしなみやトイレの清掃状態にも、施設側の意識が現れることが多いですね」
つまり、当たり前のことをきちんと守られているかどうかが重要なのだ。
富士急ハイランドは9月17日、人気ジェットコースターの『FUJIYAMA』で安全点検を行う動画を公開したが、これに清水さんは苦言を呈する。
約1分半の動画では、支柱やレールなどの点検作業の様子が静止画をつなぎ合わせて紹介されているのだが、
「高所を点検する際、落下防止のために必ず工具にワイヤーを取り付けるのですが、動画では確認できませんでした。
命綱を確実につけているのか不明瞭な写真もありました。また、安全点検をするときはケガ防止のため、袖のボタンを留めた状態の長袖で作業するのが通常ですが、腕が露出していたり、袖のボタンが留まっていない様子も見受けられました」
遊園地やテーマパークで心置きなく遊ぶために、私たち利用者に必要な心構えについても聞いてみた。
「なにより大事なのは、注意事項をきちんと守ることです。乗り物なので、絶対にケガをしないという“ゼロリスク”はありえません。電車や飛行機など一般の交通機関と同じだと思って、スタッフの注意を聞き逃さないよう改めて意識してほしいですね」