ホームドラマは今後どうなる?
京塚昌子、森光子、山岡久乃、加藤治子らが“日本のお母さん”として活躍した時代と比べ、ホームドラマはめっきり少なくなった。前出の石井ふく子氏とのタッグでも知られる『渡鬼』の脚本家だった橋田壽賀子も、今年4月に95歳で亡くなった。いかにもな日本の家庭を伝える作品として、現在も残っているのはアニメの『サザエさん』('69年 フジテレビ系)くらいだろうか。この流れについて川上さんは以下のように分析する。
「現実の世の中が、もうそうじゃないじゃないですか。今の50~60代のお母さんってみなさん元気でキレイだし、『男は外で働く、女は家を守る』という時代ではないですものね。だから、お母さんのイメージはどんどん変わっていくし、すでにひとつではないでしょう。現代のお母さんを描く作品に、京塚さんのようなお母さんが出てきたら、ドラマとしておかしくなってしまいますよね。
これからのホームドラマに出てくるお母さんは、昔のお母さん像とはまったく違っていないといけない。『今どきのお母さんらしいなあ』という人が何人も、何種類も出てくるのではないでしょうか」(川上さん)
竹山さんの見解はいたってクールだった。
「今、『サザエさん』みたいな家族というのはほぼないし、だからこそ時代劇やSFのような感覚で見られているんでしょうね。今回の城島茂さんの“お母さん役”も、おそらくそうでしょう。そして、典型的な母親像を創り上げてきたともいえる橋田壽賀子という巨人がもういなくなった。これからは、時代に受け入れられやすい脚本家が、時代に合った“お母さん像”を創り上げていくのかもしれない。“日本のお母さん像”がこれからどう枝分かれしていくか、実に興味深いですね」
お母さん役が印象的だったおもな女優&代表的な作品
■京塚昌子
・『肝っ玉かあさん』シリーズ('68年 TBS系)
・『ありがとう』〈第4シリーズ〉('74年 TBS系)
■森光子
・『時間ですよ』シリーズ('70年 TBS系)
■山岡久乃
・『ありがとう』('70年 TBS系)
・『渡る世間は鬼ばかり』('90年 TBS系)
■赤木春恵
・『おんな太閤記』('81年 NHK)
・『渡る世間は鬼ばかり』('90年 TBS系)
■岩下志麻
・『独眼竜政宗』('87年 NHK)
■高畑淳子
・『昼顔』('14年 フジテレビ系)
■泉ピン子
・『おしん』('83年 NHK)
・『渡る世間は鬼ばかり』('90年 TBS系)
■黒木瞳
・『過保護のカホコ』('17年 日本テレビ系)
■薬師丸ひろ子
・『1リットルの涙』('05年 フジテレビ系)
・『エール』('20年 NHK)
■斉藤由貴
・『いつかこの雨がやむ日まで』('18年 フジテレビ系)
■小泉今日子
・『あまちゃん』('13年 NHK)
■富田靖子
・『スカーレット』('19年 NHK)
■永作博美
・『ダーティ・ママ!! 』('12年 日本テレビ系)
■石田ひかり
・『監察医 朝顔』('19年 フジテレビ系)
■香里奈
・『だいすき!! 』('08年 TBS系)
■菅野美穂
・『ウチの娘は、彼氏が出来ない!! 』('21年 日本テレビ系)
■吉田羊
・映画『ビリギャル』('15年)
■綾瀬はるか
・『義母と娘のブルース』('18年 TBS系)
■小雪
・映画『ラストサムライ』('03年)
■長澤まさみ
・映画『MOTHER マザー』('20年)
川上麻衣子さん(かわかみ・まいこ)
1966年スウェーデン生まれ。1980年女優デビュー。『3年B組金八先生』(TBS系)で人気に。セレクトショップ「SWEDEN GRACE」(東京・谷中)オーナーの顔も。10月27日より、銀座松屋7Fで手描きグラスが中心の個展を開催。
かなつ久美さん(かなつ・くみ)
1990年漫画家デビュー。代表作はドラマ化もされた『OLヴィジュアル系』など。趣味は美容と保護犬ボランティア。LINE漫画『OLヴィジュアル系』、Kindle『緋色』ほか配信中。最新刊は『もしボクにしっぽがなかったら』(みなみ出版刊)。
竹山洋さん(たけやま・よう)
1946年埼玉県生まれ。テレビ局演出部を経て脚本家に。1994年に第2回橋田壽賀子賞、2001年に『菜の花の沖』で第51回芸術選奨文部科学大臣賞受賞。2007年に紫綬褒章、2017年に旭日小綬章受章。
(取材・文/寺西ジャジューカ)