■賄賂、失言、不倫…問題議員でも出馬できるワケは?
差別発言や賄賂など、不祥事や問題行動の多い議員でものど元過ぎれば、また候補として出馬……。こんなことがなぜ許されているの?
「立候補する自由(被選挙権)は国民の権利だからです。議員に定年制がない理由も同じ。何歳であっても本人が選挙に出たいと思うなら、その権利は保障されています」
例外として、禁錮以上の刑に服している人や、選挙違反で禁錮以上の刑を受け執行猶予中の人、また収賄罪などの罰金刑を受けた人に一定期間、立候補できない「公民権停止期間」が設けられている。
では、URをめぐる「口利きワイロ疑惑」を曖昧にしたまま再出馬する、甘利明元経産大臣の場合はどうなる?
「甘利氏はあっせん利得処罰法違反で刑事告発されましたが、嫌疑不十分で不起訴となり8月に時効を迎えました。推定無罪の原則のもとでは、立候補は当然、可能です」
はたして禊はすんだのか。落選させるも当選させるも有権者の1票にかかっている!
■なんで開票してすぐに「当選確実」を出せるの?
夜8時、投票締め切り時間が過ぎた直後、開票率が0%の段階で、テレビの選挙速報では「当選確実」が伝えられることが少なくない。これってどうして?
「報道機関では、選挙期間が始まる前から、各選挙区や比例区を対象にした情勢調査を電話やネットを通じて行っています。当日には投票所の出口で“誰に入れましたか?”と尋ねる出口調査を行います。それらの情報を入念に分析しているので開票前に当選確実を報道できるのです」
労働組合や各種政治団体の支持など、各候補者が最低でどのくらいの票を持っているかという「基礎票」も、出口調査や情勢調査の情報に加えて分析される。
「選挙前に当落の情勢が報道されると、選挙結果に影響するともいわれています。勝ち馬に乗る効果といって地滑り的勝利をもたらすものと、負けているほうに同情票が入って、当初の予測と逆転現象が起こる場合もあります」
■選挙に落ちたらどうなる?
現職議員や会社を辞めて立候補した人が落選したら、その後の仕事はどうなるのか。保障などはあるのだろうか。
「日本には在職立候補制度がないため、選挙に落ちたら、その人は無職になってしまいますね。アメリカでは、大統領選に下院議員が立候補して、落選しても、議員としての職を失うことはありません。しかし日本では、国会議員が都知事に立候補する場合、議員を辞めないと立候補できません。また一般企業の場合、会社の理解があれば、立候補して落選しても仕事に戻ることは可能でしょうが、そういう会社はまだまだ少ないのが現状でしょう」
'19年の統一地方選では、宇宙航空研究開発機構(JAXA)職員の水野素子氏が、「立候補休職制度」を利用して出馬し話題になった。立候補の自由が、職を失う可能性があることによって奪われるのは大きな問題。在職立候補制度や選挙休職制度を積極的に導入するべきでは?
■「選挙公約」守らなかったらどうなるの?
○○に断固反対します! と選挙で銘打っておきながら当選してしまえばこっちのもの、と前言を覆す。そのようなやり方が許されるのか。罰則規定などはないのだろうか。
「残念ながら公約違反に罰則規定はありません。しかし、公約を守れなかったのであれば、少なくとも説明責任はあるはずです。逆に、状況が変わったのに公約にこだわって、新しい政策が取れないとしたら、それはそれで政治家失格ということになります。どうあれ、公約違反に対して、有権者がチェックして、説明責任を果たさせることは重要ですね」
「カジノ誘致は白紙に」と訴えて当選しながら、当選後に誘致表明をした林文子横浜市長に対しては、昨年、市民によるリコール(解職請求)運動も起こった。法定署名数に届かず解職はされなかったが、林氏は今年8月の市長選で落選した。選挙後も、公約に対しての責任を問うことは、有権者の重要な役割なのだ!