政治編

■誰でも「政党」をつくっていいの?

「(仲間などが集まってつくる)任意団体であれば、誰でもすぐに政党を名乗ることができます。とはいえ、政党要件を満たさない政治団体で選挙活動をするとなると、簡単ではありません。選挙で政党として扱われるためには“政党要件”を満たさなければならず、これがないと政見放送にも出られず、政党交付金も受け取れません。供託金が高額な日本では、政党交付金が受け取れないと財政上、厳しい選挙になります」

 政党として認められるための要件とは、国会議員が5名以上いること。5名以下の場合、直近の国政選挙で2%以上の得票をしていることが必要になる。

「例えば'19年の参院選では、新しい政党の『れいわ新選組』と『NHKと裁判してる党弁護士法72条違反で』(旧・NHKから国民を守る党)が比例区で当選者を出し、2%を超える得票率を得たので、政党として認められました」

 政党として認められると、小選挙区の候補者が政見放送にも出られるため、支持者もさらに広げることができる。

■「小選挙区制」と「比例代表制」、何がどう違う?

 衆議院議員は「小選挙区制」と「比例代表制」の2つの制度で選ばれる。投票所で渡される2枚の投票用紙のうち、候補者の名を書くのが小選挙選挙で、政党名を書くのが比例代表選挙だ。

 小選挙区制は1つの選挙区で1人しか当選できないため、各政党は基本的に1人の候補しか立てない。また、政党の公認や推薦がない無所属の候補者が立候補したとしても、組織力のある政党の候補者の票を上回ることは難しいのが現実。

 さらに問題なのは、例えば当選者が300票、次点が250票、次々点が200票を集めた場合、450票の民意が“死票”になることだ。岩本さんは言う。

「小選挙区制でも、海外の例のように、政党が候補者選定の段階でクオータ制度を定めて女性候補の比率を増やせば、より多くの女性議員が生まれる可能性はあります。すると、ほかの政党も競って後へ続くでしょう。そういう流れがつくれたらいいですね」

■衆議院と参議院、国会と内閣、何がどう違うの?

 国の権力が1か所に集中しないよう、司法・立法・行政の権力を3つに分けるしくみを「三権分立」という。そのうち法律を定める「立法権」を持つのが国会だ。その法律に沿って政策を実行する「行政権」を持つのが内閣。法律に基づいて裁判を行う「司法権」を持つのが裁判所だ。

 立法機関である国会は、日本では衆議院、参議院の2院制。任期が4年で、内閣による解散がある衆議院に対して、解散のない参議院の任期は6年で、3年ごとに半数が選挙を行うという違いがある。

「両院は独立して審議を行いますが、その決定に違いがあった場合、衆議院の決定が優先されることがあります。任期が短い衆議院のほうが有権者の意思をより反映しているとみなされるからです」

 一方、任期が6年と衆議院に比べて長い参議院は、政策や法律づくりにじっくり取り組める利点があるといわれている。ちなみに次回の参議院選挙は来年7月ごろの予定。

■女性議員がまだまだ少ない理由って?

 現在、衆議院での女性議員の比率はわずか10・2%。'20年の「列国議会同盟」の調査によれば、世界191か国中、165位という低さだ。女性議員を増やすために世界120の国や地域では、選挙で候補者や議席の一定割合を女性に割り当てる『クオータ制』を取り入れているが、日本では制度化もされていない……。

「日本でも'18年に『政治分野における男女共同参画推進法』が成立していますが、数値目標や義務化はありません。フランスでは小選挙区の候補の女性比率が50%を割ると政党補助金から予算が引かれる規定がありますし、イギリスでは労働党が最終候補者リストを女性ばかりにする選挙区を設けて、女性候補を増やしています」

 格差や貧困、差別など、女性をめぐる状況はコロナ禍でいっそう厳しくなるばかり。だからこそ女性が政治の場に立ち、社会を変革していくことが今、求められている。女性の投票率を上げていくことは、その一歩になるはずだ。