たまたま通りかかった東京・赤坂の豊川稲荷。愛知県にある豊川稲荷の東京別院だ。
境内にずらりと並ぶ赤い提灯(ちょうちん)には、奉納した人物の名前が書かれていて、なかでも目立つ場所には、ジャニーズ事務所関連の会社やタレントの名前が記されている。それはファンの間でも有名で、ある種の“ジャニーズ聖地”となっていた。
しかし、これまでずっとあったジャニーズ関連の提灯が、ごっそりとなくなっていたのである。
かつてそこには「東山紀之」「堂本光一」「堂本剛」「滝沢秀明」「今井翼」そして「ジャニーズ事務所」「ジェイドリーム」などの名前が、“芸道精進”“商売繁盛”の文字とともに記され、ファンだけでなく、参拝者の目を引きつけるような存在だった。しかし、現在はなぜかKing & Princeのメンバー「神宮寺勇太」だけが、「マツコ・デラックス」「有働由美子」「土屋太鳳」などの提灯と並んでいた。
「かつてのジャニーズ提灯の顔ぶれを見ると、かたっぱしからジャニーズタレントが名を連ねるというものではなく、まさに“中枢”、事務所またはジャニーさん、メリーさんにとっての大切な選ばれし面々のみという印象がありました」
と、ジャニーズに詳しいテレビ誌記者は言う。
それでも豊川稲荷はジャニーズファンの聖地
これら中枢の提灯が取り外されたのは、2年以上前の2019年のことだそうだが、なぜこれまでの“恒例行事”を取り止めてしまったのだろうか。前出の記者は「推測の範囲ですが」と前置きして言う。
「時期的に、ジャニーさんが亡くなりメリーさんも会長を退任という当時の事情もあるのではないでしょうか。'18年にタッキー&翼を解散した滝沢秀明氏のジャニーズアイランドの社長就任、ジャニーズ事務所の副社長に就いたのも'19年ですからね」
また、キンプリの神宮寺については、デビュー直後のドキュメンタリー番組で豊川稲荷を訪れ、多くの先輩たちの名前を眺めながら成功を祈願する様子が映し出されたことがある。
「神宮寺くんは、個人で奉納されたのではないでしょうか。京都にある車折神社も芸能の神様として有名で、多くの芸能人が名前を記載した玉垣を奉納しています。もちろんジャニーズの名前も多く、Jr.メンバーも奉納しています。それに比べ、豊川稲荷は歴々のメンバーの名前の圧もあるのか、個人で奉納する人はいませんでした。そう言う意味で神宮寺くんは強いですね(笑)」(同前)
芸事の神様としても知られる豊川稲荷とジャニーズ事務所。その関係を昨今まで築いてきたのは、今年8月に死去した、ジャニーズ事務所の名誉会長のメリー喜多川さんが、豊川稲荷を古くから贔屓にしていたからだという。
「メリーさんが可愛がっていたKinKi Kidsのデビュー会見も豊川稲荷で行われました。また古い話ですが、'70年代にソロとして活躍した豊川誕は、メリーさんが豊川稲荷からとって命名するほど、古くからの付き合いのようです」(芸能ジャーナリスト)
かつてはジャニーズタレントの初詣スポットとして有名だったが、あまりにも多くのファンが殺到してしまうため、神奈川県にあるお寺に変更したのは有名な話だ。
「とはいえ、提灯こそないけれど若いころから馴染み親しみ、売れっ子になってもときどきプライベートで参拝しに来るジャニーズタレとはいるようですね。境内の売店などで飲食していると聞いたことがあります」(同前)
長年にわたりジャニーズと縁が深い豊川稲荷。それはファンにとっても同様のようで、商売繁盛や健康平癒、合格祈願などさまざまな願いが書かれた絵馬の中に、Snow Man、SixTONES、Jr.などのヒット祈願が多く目立った。
神宮寺の提灯のみになってもファンにとっての聖地にはかわりない。この先も、ジャニーズに縁の深いパワースポットとして親しまれる場所であってほしい。
〈取材・文/渋谷恭太郎〉