参議院選挙はこれほどまでに恐ろしい
岸田官邸は、政局の流動化を回避すべく、今日も頭を痛めています。
参議院の総定数248議席の、過半数は125です。参院選の最低ノルマは、“非改選を含めた”自公で過半数の維持で事足ります。非改選議席は68だから、現下の戦局からして、57議席は穏当な数字といえるでしょう。しかし総理は徹頭徹尾勝敗ラインについては明言を避けています。明言イコール責任の発生ですのでそれを回避しており、これは歴代総理のセオリーです。
2月4日開幕の北京五輪に例えれば、総選挙は勢いで突破できる直滑降、参院選はフルマラソンのクロスカントリーです。
衆議院総選挙は、解散権は総理にあり、これは「伝家の宝刀」と呼ばれます。戦局を見計らって解散時期を自由に選ぶことができます。
対して参議院は「通常」選挙と言うだけあって、投票日というゴールを設定して戦いに臨みます。つまり、その間に潮目が変わるリスクがあるのです。ゴール目前にアクシデントが発生すると、もろにその影響をこうむります。
事実、1998年の参院選では、当時の橋本龍太郎総理は減税への発言がブレて自民党は惨敗。橋本氏は敗北の責任を取って退陣しました。2004年選挙は当時の小泉純一郎総理が自らの年金加入歴について「人生色々、会社も色々」と発言したことがきっかけで自民党は失速。
2007年は“絆創膏大臣”赤城徳彦氏など度重なる閣僚の不祥事で大敗。参議院第一党を民主党に明け渡し、安倍晋三総理は投票後1か月半で退陣。2010年、民主党菅直人総理は、消費税率上げに言及し敗北、参議院で少数与党となり政権は下降線に転じました。
参院選が鬼門であることは岸田総理も痛いほど知っているはずです。
不祥事対応、コロナ対策がカギ
今年の干支は「壬寅(みずのえとら)」。これには、厳しい冬を乗り越えて、芽を吹き始め、新しい成長の礎となるというイメージがあるそうです。岸田総理にとって昨年衆院選後の臨時国会はいわば“試運転”でした。
1月17日からいよいよ“本番”となる第208回通常国会が召集されました。参院選の投票日を7月10日に設定すれば、公示日は6月23日。国会会期末の6月15日とは目と鼻の先です。
従って、150日間の国会論戦の一挙手一投足が、有権者の審判に直結します。総理は与野党が真っ向から対立するような法案は出さず、無風の国会を演出する腹積もりのようです。のっけから、審議が注目を浴びそうな感染症法、検疫法、予防接種法の一括改正、スリランカ人女性の死亡による入管難民法改正案の提出が見送られてしまいました。
焦点は、政権にダメージを与えるような不祥事が飛び出た時です。野党が参院選で勝つには、舌鋒鋭く予算委員会で指弾するしかありません。総理は答弁、事後対応含め、どう致命傷を回避するか。しかし、菅義偉前総理のたどった道を見てもわかる通り、新型コロナの感染拡大だけは為す術がないのではないでしょうか。
岸田総理は壬寅のイメージ通り、厳しい冬を乗り越え、安定政権の芽吹きを呼び込むことができるのでしょうか。