「多くの学校では、知識や技術を覚えることが『目的』になりますが、プロジェクトでは知識や技術はすぐに役に立つ『道具』や『手段』になる。
自分で体験して技術を手に入れ、大きな発見をすることもあります。活動を通して問題を見つけ、観察し、仮説を立て、結論を導き、実行して確かめる。高度な知的探究の繰り返しです」
この学校ではチャイムも鳴らない。子どもたちは自分で時計を見て自主的に動く。2コマ100分をセットにしているため、とことん集中して取り組むことができる。1日中プロジェクトに取り組む曜日も週に1日設定されている。
基礎学習の時間には、プロジェクトと連動した学習や子どもたちが楽しめるオリジナルのプリントで個別に学ぶ。
算数や国語、英語などの問題文に、校長や堀さんの名前を登場させたり、子どもたちが手作りする遊具の建設に必要な計算が例題になったりする。
堀さんは現在、全学校の小6と中3の英語の授業を担当。6年生の英語の授業は、例えばこんな調子だ。
「じゃあ、今から日本語で言うから、英語にしてや」
「やあ元気?」
「How are you?」
「なんかあかんわ〜」
「I don't feel well」
「どうしたん、眠いんか?」
「What's wrong? Are you sleepy?」
「ちゃうねん。風邪ひいてん」
「No,I'm not. I have a cold」
和歌山の学校では関西弁。ほかの学校でもそれぞれの土地の言葉で、日常会話にできるだけ近づける。子どもたちは笑いながら、英語に訳して大きな声で一斉に答える。
堀さんに手渡された学校のパンフレットを開くと、1ページ目に大きな文字でこんな言葉が印刷されていた。
卒業生のたくましい活躍
教科書にとらわれない学びが中心で、宿題もテストもない。通知表は数字による評定ではなく、その子の伸びているところを文章で記述する。
職員室にはいつも子どもたちが自由に出入りし、大人のひざの上に座る子もいれば、おんぶや肩車をしてもらう子も珍しくない。学園長の堀さんを堀ジイと呼ぶ子だっている。
見学者からはこんな質問が出る。
「子どもたちは元気で楽しそうですが、学力は大丈夫ですか。進学できますか」
「厳しい社会でうまくやっていけるんでしょうか」
入学を検討している保護者も、教育関係の見学者も、未来の心配をする。
開校3年目には、「受験指導をしてほしい」と一部の保護者から声が上がったこともあった。しかし、「受験指導はしない」という方針は全く揺るがなかった。