帽子を忘れた配達員がとった行動
一方、報酬面でブーイングを浴びているのがUberだ。昨年報酬体系を刷新した。
「以前の算出方法は、エリアごとに金額は異なりますが、距離などによって明確に金額が決まっていました。新しい方式では“ベース”という料金がまずあり、時間や距離をもとに算出されるようです。それに加えて“配達調整金額”というものができました。これは交通状況の混雑具合などから算出される料金らしいのですが、“何がこうだったから、規定のとおり、この報酬額となる”ことが明確に示されていません」
Aさんの場合、以前と同程度の配達量をこなしても報酬は6〜7割に落ち込んだ。
「規定が変わったことによって報酬が下がるなら、会社の事情もあるので仕方ないと思います。しかし、報酬の内訳が明示されなくなり、報酬額決定のシステムがブラックボックス化していることは問題じゃないでしょうか」
自由に働けるイメージのあるフードデリバリーだが……。
「出前館の注文で配達に行ったら、後でお客さんにクレームを入れられました」
そう話すのは30代女性のBさん。出前館やUberで配達員の登録をしている。
「出前館は配達のときに出前館の帽子をかぶらなきゃいけないのですが、それを忘れて。また普通、配達先に着いたら鞄から商品を出して、商品だけを持ってお客さんに届けるのですが、そのお客さんは庭にいて鉢合わせしてしまいました。そのときにUberの鞄を使ってたんです。それでお客さんが“出前館で頼んだのに、Uberから届いた”と思って、不審に思って会社に連絡したみたいで。自分が悪いのですが」
前出のAさんは、
「出前館は“他社のロゴが入った鞄は禁止”としています。最近Uberのロゴ部分を黒いテープで隠している人はそのためですね」
配達員の多くは各社を掛け持ちすることも多い。
「単純に掛け持ちしたほうが配達件数が増えます。会社の掛け持ちだけでなく、注文の掛け持ちも多いですよ。同じ方角の注文を同時に受けて、複数の注文を同時にこなす。デリバリーのドライバーは運転マナーが悪いといわれていて、無謀な運転をしている人も少なくない。ただ事故が多くなってしまう大きな原因の1つがこの掛け持ちができることだと思います。複数をこなすためにかなり配達を急いでしまっているからです」(Aさん、以下同)
危険な運転は問題外だが、配達員が最も怖いのが事故だ。
「Uberや出前館の社員ではなく、個人事業主なので、やはり補償は薄いですね。改善している部分はありますが基本は“自分で解決してね”というスタンス。一度自分も歩行者と接触して事故になったことがあるのですが、配達中ではなく自宅に帰っているときだったので、Uberからの補償はなく、自分で治療費その他を支払いました」
Uberに報酬体系変更の理由、出前館にキャンペーンの収支などを問い合わせたが、期日までに回答はなかった。
あなたの元に届くデリバリーフードもさまざまな背景を持って届けられている。