フジテレビでは続編制作が難しい
「'10年には純の妻の結が勤め先の店長と不倫。'11年に螢と結婚した正吉が東日本大震災の津波に巻き込まれるという展開です。'20年には新型コロナ禍も描写され、五郎は'21年の3月24日、つまり田中邦衛さんと同じ日に亡くなるという内容だったんです」(トークショーの出席者)
昨年末のスポーツ紙のインタビューでも、具体的に語っている。
「今年は、黒板五郎は実際にどういう死に方をしたかということを書きたかったんです。邦さんは死んでるから、過去の映像を使って計画したんだけどフジテレビに使わせないって言われちゃった。純役の吉岡秀隆に富良野まで来てもらって話し合って、脚本も第7稿まで書いたんですけどね。今年40周年だったから『さらば黒板五郎』を作りたかったんだけどね」
“聖地”である富良野をはじめ、確実に続編への期待が高まっているはずなのに、フジテレビはなぜ前向きな姿勢を見せないのだろうか。
「今では考えられない撮影スタイルですからね。演者とスタッフ100人以上が富良野市内のホテルを貸し切りにして半年間の合宿状態。倉本さんが撮りたい天候を何日も待つこともありました」(当時を知るフジテレビ関係者)
フジテレビ自体も当時とは経営環境などが様変わりした。
「社員に早期退職を促すぐらい、収益が悪化しています。働き方改革で長時間労働もできなくなり、以前のような“いいものを作るためだったら、とことん時間もお金もかける”というやり方は無理でしょう。会社の体力的にも、続編制作は難しいのだと思います」(同・フジテレビ関係者)
コラムニストのペリー荻野氏も、倉本のこだわりの強さは本物だと指摘する。
「撮影するときは台本読みから全員が集まって、倉本先生自らが句読点の入れ方までセリフの言い方を細かく指導するんです。先生は、ドラマでは描かれていない五郎の幼少期まですべて作り込んでいました。長期ロケも含め、今すぐに先生のこだわりを完全な形にするのは難しいかもしれません」
時代の流れに抗うことは難しいようにも思えるが、倉本は希望を捨ててはいない。
「親しい周囲の人たちには“ドラマがダメなら、アニメで作れないだろうか”と漏らしていたといいます。今回の『北の国から』完結編に関しては、倉本先生の執念のようなものを感じますね」(倉本の知人)
脚本家自身が提案した、まさかの“アニメ計画”。実現の可能性はどのくらいあるのだろうか。
「アニメという表現なら、確かに長期のロケがなくなりますし、キャストのスケジュール問題も解消されます。北海道の美しい風景描写も、日本の技術力なら倉本さんが追い求める世界観を表現できるかもしれません。しかし、アニメも質を追求すれば当然、制作費は高騰します。ケタ違いに費用を安くできるかといったらそうではないと思いますね」(アニメ雑誌編集者)
実際にアニメ化の動きは進んでいるのか。富良野市内にある倉本の自宅を訪ねたが、回答を得ることはできなかった。
フジテレビにも、過去映像の使用許可を出さなかった件について問い合わせたところ、
「特にお答えすることはございません」との回答だった。
アニメならば、五郎の人生を描ききることができるかもしれない。倉本の執念は実るだろうか─。