メイクした“推しジャニ”を見たい
「配信サービスが充実しているにもかかわらず、今でも人気グループのCDは数十万枚のセールスがあります。確実に“モノ”を買ってくれるジャニーズのオタクやファンを狙ったほうが売り上げを見込めるのでしょうね」(辻教授)
これまで美容誌は、雑誌不況の中でも一定数のコアな読者が購買していたため、大きく部数を落とすことはなかった。しかし、昨今のコロナ禍の影響を受け、美容誌にも変化が起きているという。
「外出が少なくなったことや終わりの見えないマスク生活で、コスメ市場は大きく縮小しました。美容誌も当然そのあおりを受け、売り上げを落としています。コロナの終息がまだまだ望めない以上、他ジャンルの雑誌と同じようにジャニーズという強力なコンテンツを使って、部数減を食い止めようとするのは自然な流れでしょう。普段、雑誌を手に取らない人たちに読んでもらえるいい機会ですからね」(前出・美容ライター)
実際、彼らが紹介していたコスメを買いそろえたというファンの声も多く聞こえる。
「これまで美容誌では、男性にモテるメイクが表現されてきました。しかし、最近では“モテ”よりも“推し”をテーマにする雑誌が増えています。“推し”には恋愛感情だけでなく、“理想の自分の代理”という意味合いも。今の美容誌では、男性の評価に合わせるのではなく、“なりたい自分”を目指して自分磨きをすることがトレンドとなっています。メイクをした“推しジャニ”を見て、私も頑張ろうと読者が思えるんです」(辻教授)
彼らの好きなコスメを使ってみたくなるのって、すごく自然なことなのかも。
辻 泉 中央大学文学部教授。文化社会学、メディア論を専門分野とする。著書に『趣味とジェンダー』(青弓社)、『ファッションで社会学する』(有斐閣)など多数