アカデミー賞俳優・草なぎの演技力
昨年は映画『ミッドナイトスワン』で映画賞を総なめにし、あらためてその演技力の高さが評価された草なぎ剛。
その第1位は『僕と彼女と彼女の生きる道』('04年、フジテレビ系)。父の徹朗(草なぎ)と娘の凛(美山加恋)の親子の絆を描いた感動作。「再放送で何度も見ましたが、毎回泣けました」(28歳・埼玉)、「草なぎくんの優しい眼差しと、子役の子とのやりとりが感動的」(53歳・神奈川)。
第2位は草なぎ演じる極道の組長・彦一が、自らの身分を隠し介護ヘルパーとして働くことになる『任侠ヘルパー』('09年 フジテレビ系)。「いい人の役柄が多かったので、そのギャップがよかった」(46歳・大阪)、「子どものころに見て、草なぎくんの演技がすごいなって思った印象的なドラマ」(28歳・愛知)。
第3位はエリートサラリーマンだった富生(草なぎ)が、親の借金でホームレスまで転落しどん底から這い上がろうと奮闘する『銭の戦争』('15年、フジテレビ系)。「ストーリーがすごく良くて、草なぎくんの演技が抜群だった」(58歳・福岡)
「草なぎさん以外の4人は自分の個性や持ち味を生かした役を演じてきていますけど、彼はこと芝居となると草なぎ剛を完全に消し去る。いわゆる憑依型の役者さんで、そこに本来の草なぎ剛は全くいないんです。もちろん、初期の『いいひと。』や『成田離婚』(ともに'97年、フジテレビ系)なんかでは草なぎさんっぽい誠実さを前面に出した役を演じてはいました。
そんな彼が役者として開眼したのが、'03年の『僕の生きる道』('03年、フジテレビ系)から『僕と彼女と彼女の生きる道』、『僕の歩く道』('06年、フジテレビ系)と続く“道シリーズ”です。抑制されたトーンで淡々と物語が進んでいくというのが本シリーズの特徴ですが、余命1年の教師、娘の扱いに困るシングルファザー、自閉症の青年という全く異なった役どころをその世界観の中でリアルに表現していました。
もう1つの魅力が、巧みな二面性の表現であると思うんです。『任侠ヘルパー』という作品が象徴的なのですが、ヤクザの冷酷さとヘルパーの情の深さをひとつの役柄の中で同時に表現することができる。
これより数年前に『恋に落ちたら~僕の成功の秘密~』('05年、フジテレビ系)という作品があって、ネジ工場を経営する善人が工場の倒産の憂き目にあい、堤真一演じる冷徹な企業家と知り合い、成り上がっていく話なんですけど、その過程で彼がどんどん嫌な人間になっていくんですね。成功した彼が高級ワインを傾けるシーンで、グラスに映った顔がものすごく醜くて……人として地に落ちたところをその表情ひとつで見事に表現していて、度肝を抜かれました。演技力に関しては、草なぎさんは本当にずば抜けていると思います」