「おはようございます」ではなく「おつかれさまです」

 それは、全国に14ある『国立青少年自然の家』という社会教育施設で、比較的東京に近い地区で行われていた。

 施設では様々な決まりごとがあり、その1つに、施設を利用している人たちはすれ違ったら必ず挨拶を交わすというものがあった。「おはようございます」や「こんにちは」、「こんばんは」──そういった日常会話で使うもの。

 同事務所の子どもたちがみんな大きくな声で、挨拶をしてきたことをよく覚えている。滑舌がよく、さすが役者だと感心していた。なかには、私のことをスタッフと思ったのか、「おつかれさまです」だったのには驚いた。階段ですれ違った小学校低学年ほどの少女だったが、あの年齢で「おつかれさまです」といった言葉が自然と出てくるあたりに、徹底したプロ意識を感じた。

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 芦田は3歳の時にこの事務所に所属したのだが、その選択は間違っていなかったようだ。そんな彼女もじきに大学生になる。芸能活動を続けることになった場合、今後も“子役専門事務所”に所属したままなのだろうか。前出の老舗芸能事務所幹部はこう語る。

「子役専門事務所にはほかの芸能事務所にない子役に特化したマネージメントのノウハウがあります。たとえば映画・ドラマ制作サイドとの“太いパイプ”などです。子役といえばあの事務所、ということで、キャスティングがまとまりやすい。それは逆のことも言えます。大人になっても子役事務所に所属している例がないことはないですが、移籍するケースが多いですね。芦田さんが有名私立校を受験すると決めた際も、事務所はそれに集中できる環境を作ったといいます。今後についてもきっと彼女の意志を尊重するでしょう

 芦田は今後も役者と学生の “二刀流”でいくのか、それとも引退する?──今後の進退が気になるところだ。

<芸能ジャーナリスト・佐々木博之> ◎元フライデー記者。現在も週刊誌等で取材活動を続けており、テレビ・ラジオ番組などでコメンテーターとしても活躍中。