「楽しくないと俳句じゃない!」

 夏井は番組のほかにも俳句の種まき活動を精力的に行っている。『プレバト!!』効果を感じることも多い。

「『句会ライブ』にいらっしゃるお客さんの質が変わってきました。以前は、俳句に興味があって、もうちょっと上手になりたい、勉強したい、という人たちでした。今は、作ったことがないけど、番組を見て、“夏井先生がどれだけ怖いか見にきた”という人たちが何百人、多いときは1500人ほども会場に足を運んでくださるようになりました」

 一般の人たちが俳句に持っていた苦手意識を拭い去ったが、まだまだやるべきことが残っている。

「俳句は難しい、古くさい、作れないっていう思い込みに対して、どうやって敷居を低くしてその壁をぶち壊すかを、30年やってきました。でも、認知度が広がることと、人生に俳句というアイテムを手にしてくれることには、大きな差があります。教育と文化というのは100年を単位に考えなければいけません。そうしなければ、まいた種は芽を出しただけで枯れてしまいます。ブレない志を持ち続けて、若い人たちに託すしかないんです

 100年というのはあまりにも長い時間だが……。

『プレバト!!』がきっかけで、俳句に対するハードルが確実に下がったと感じているという夏井いつき
『プレバト!!』がきっかけで、俳句に対するハードルが確実に下がったと感じているという夏井いつき
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「近代俳句を生んだ松山出身の正岡子規、高浜虚子、河東碧梧桐の時代は100年以上前。今すべきは、俳句の都・松山の遺産を100年先につなげていくための種まきなんです。25年目となる俳句甲子園では、かつての出場者が引率教員となって俳句甲子園に戻ってくれています。こういうのが肥やし、水、光になって、種を育てていくんです」

 好きだった教師の仕事に未練はない。俳句を使ってコミュニケーション能力を育成することで、教育に生涯関わることができているからだ。

「俳句を作らなくても、面白いって思うだけで十分です。実際に俳句を始めると、句会も楽しいですし、俳号で呼び合う横のつながりが心地よいですよ。今はネットでの投句先もあって、そこでのつながりも広がるようです。上達を目指す楽しみもありますが、プロを目指すのではないですから難しく考える必要はありません。“楽しくないと俳句じゃない!”ですよ」