目次
Page 1
ー ジロジロ見られたり、指をさされて笑われる
Page 2
ー “障害は個性”と言わると違和感
Page 3
ー 違いを尊重し合える社会へ

「“病気だから”と諦めたくない」。そう語るのは、重度の口唇口蓋裂の小林えみかさんと、小林さんの友人でトリーチャーコリンズ症候群の山川記代香さん。見た目の症状を伴う先天性疾患を持つふたりは、同い年ということもあり、悩みを共有できてなんでも話せる仲だという。

 Youtubeチャンネルで対談したり、ふたりで講演会を行ったりしている彼女たちに、経験を重ねてたどり着いた“外見との向き合い方”、そして他者とともに生きる社会への思いを聞いた。

ジロジロ見られたり、指をさされて笑われる

 小林さんはこれまでに20回以上の手術を受けてきた。口唇口蓋裂に加え、両耳の高度難聴、小耳症、心臓疾患など、複数の症状を抱える。「顎の病気の手術も何度か経験しました」と振り返るその声には、過去の痛みとともに、確かな強さがにじむ。

 山川さんもまた、16回の手術を経験してきた。「ミルクが飲めない状態で生まれて、口の上部の手術から始まりました。耳は耳たぶしかない状態で、片耳4回ずつ、計8回の手術を受けました」と話す。

 幼い頃から幾度となく入院と手術を繰り返してきたふたり。身体的な治療だけでなく、精神的な痛みもまた深く、長く続いた。

「小学生のころは、周囲の子にジロジロと覗き込まれたり、指をさされて笑われたりすることが多くて。難聴や噛み合わせのせいでうまく喋れなかったこともあり、保育園ではほとんど話さなくなってしまいました」(小林さん)

 山川さんも、似たような体験をしている。「自分の外見がすごく嫌だと思ったのは、小学生のとき。はっきりとそう感じたのはそのころが一番濃いですね」

 子どもたちの無邪気な反応だけでなく、大人の無理解が突き刺さることもあった。いまでも、人前でマスクを外すことには抵抗があると山川さん。

「昔ほどではないですが、ぱっと見られたときに反応があったりするのは怖いな、と。いろんな視線が集まるので、いまだにマスクを外すというのは少しストレスもあるというか……」(山川さん)

 そうした感情は、子どものころの「視線」に対する記憶が、いまも消えずに残っているからかもしれない。

 また少し意外なことに、同じ症状を持つ人と出会うことすら、最初は複雑な感情を抱いたという。

「病院で同じ病気の子を見かけると、やっぱり意識してしまって。見ないようにしたり、逆に見すぎてしまったり。あのころは、自分自身を受け入れられていなかったからだと思います」(小林さん)

 山川さんも、「同じ症状を持つ人を見たとき、自分を鏡で映し出されたように感じた」と打ち明けてくれた。