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「これは間違いなく売れる!」
あるオーディションのために、200本近くのデモテープを聞いていた音楽プロデューサーの若松さんは、1本のテープを再生した途端、直感的に感じたという。
その歌声の持ち主が、当時16歳の蒲池法子(かまち・のりこ)こと、のちの松田聖子だった。
歌声だけで才能を発掘
当時、CBS・ソニーに籍を置く新米の音楽プロデューサーだった若松氏。その歌を耳にした瞬間のことを本の中で次のように語っている。
《全身全霊にショックを受けた。福岡県に住む16歳の歌声はどこまでも清々しく、のびのびとして力強かった。明るさとしなやかさと、ある種の知性を兼ね備えた唯一無二の響き。
私は元来『直観』が鋭く自分の感覚を大切にして生きているが、そのときの衝撃はいまも忘れられない》
実は、歌のうまい人はほかにたくさんいたそうだが、聖子の歌は全然違った。
「理屈ではなく、その歌声は別格でしたね」
だが、同僚のプロデューサーやスタッフらに聖子の歌声を聞いてもらうも、誰の反応も薄く、特段大きな評価は得られなかった。しかし自身の「直感力」から、“彼女は売れる”という思いは微塵も揺るがなかった。
実はこのときのカセットテープには、写真もプロフィールもついていなかったという。歌声だけで「この子だ!」と決めた。
その後、福岡に直接、聖子を訪ねていって本人と対面、「想像していたよりすごくいい!」と感じたという。
「紺色のワンピース姿で表れた聖子は、とにかく清楚な雰囲気でしたね。言葉数は多くも少なくもないんだけれど、分かりやすくてハッキリしている、そんな印象を受けました」