映画監督による性加害、未成年の舞妓への飲酒強要、飲食店でのナメクジ大量発生――。SNSを通じた“暴露”が、事態を動かす光景はもはや当たり前になっている。
そんな中、影響力を強めているのが、“暴露系”と呼ばれるインフルエンサーたちだ。中でも、芸能人のスキャンダルを次々に暴露した「ガーシー」こと東谷義和氏が、参院選に当選し、大きな話題を集めたのは記憶に新しい。
今回、筆者はそうした“暴露系”インフルエンサーの一人、滝沢ガレソ氏に話を聞くことができた。氏は「ネットの情報屋」と呼ばれている。SNS上で日々起こる「炎上事件」を、手際よくまとめて投稿しており、Twitterのフォロワー数は70万人超(2022年8月26日時点)と、大きな影響力を持つ。タレコミDMで寄せられた木下優樹菜さんの不倫疑惑を、世間で初めて取り沙汰したことでも有名だ。
滝沢ガレソ氏のアカウントには、連日100件超のタレコミが届くという。なぜ人々は、見ず知らずのインフルエンサーに、「告発」を依頼するのだろうか。
「タレコミ」の中身
「強い立場の人、いわゆる『上級国民』たちに、一矢報いてほしい。きっとそう期待されているんじゃないかと思っています。
山本太郎さんとか、NHK党の立花さん、ガーシーさんが支持されるのと、同じ理由ではないでしょうか。あらゆることが既得権益でがんじがらめになっている今、世の中を是正するためには、組織を一度中からぶっ壊してくれる「破天荒」を送り込むしかない。そんな思いを感じます」(滝沢氏)
多くのタレコミは「自分がこんなひどい経験をした」という被害者としての告発であるという。ただし、そうした告発はバイアスがかかりやすいため、加害者側の言い分も考慮しながら、公開すべきかを慎重に見極めているそうだ。
また、タレコミを寄せる動機としては、テレビや週刊誌といった既存メディアよりも、インフルエンサーのほうが身近に感じられる、という理由があるという。
例えば「学校でいじめにあった」場合、子供たちの相談相手は親や先生などいわゆる「大人たち」になる。ただ、子どもからすると、大人相手は相談がしづらい。そもそも学校という組織は事なかれ主義であることが多いため、いじめの相談をしてもまともに取り合ってもらえないこともある。会社も同様だ。
そうした大人よりも、普段からYouTubeやTikTokで親しんでいるインフルエンサーのほうが信頼できると感じるのだろう。SNSを通じて直接DMを送れれば、親身に聞いてもらえる可能性がある。そうしたインフルエンサーたちが、テレビや新聞に匹敵する影響力を持つようになっている。
「つまり、インフルエンサーが一種の『駆け込み寺』として機能しているんだと思います」(滝沢氏)