過去のことで彼女のすべてを否定するのはいかがなものか
話を上原多香子に戻しましょう。美容家は化粧品開発や売り上げの管理など裏方の仕事もありますし、自分や自分の人生を売り物にするために前に出る必要もあります。ずっとアイドルや女優として表でスポットライトをあびてきたお多香さんに、それができるかというと疑問です。こう書くと、お多香さんに美容家としての資質がないと言っているように聞こえるかもしれませんが、そうではないのです。彼女が断然輝くのは、表でスポットライトを浴びること、すなわち芸能界だと思うのです。
お多香さんが何か新しい活動を始めるたびに「表に出てくるな」という声が上がります。それは彼女のかつての夫とのことが無関係ではないでしょう。確かに自分がご遺族の立場だったら、感情的にやりきれないものがあると思います。最近のテレビはコンプライアンスを重視していますから、お多香さんがテレビに出られないのも仕方ないと思います。
けれど、過去のことで、お多香さんのすべてを否定するのはいかがなものでしょうか。
私は男女の関係を左右するのは、タイミングだと思っています。たとえば、繊細な男性とニブい女性というカップルは、平時であれば相性がいいと言えるでしょう。何かと傷つきやすい男性は、細かいことは気にしない女性に癒やされるでしょうし、女性は相手のことを“ちょっと細かいけど頼れる”と思うはず。しかし、タイミングが狂って、思いもよらない出来事が起きると、男性は繊細さ故にいろいろなことを一人で抱え込んでしまいますし、女性はなんせニブいので男性が悩んでいることにすら気づかず、男性から見て無神経な行動を取って追い詰めてしまうことがあります。こうなると、悲劇的な結末につながってしまうかもしれません。
お多香さんと元夫に関しては、表に出ていないことだってあるはずで、元夫がこの世にいない以上、道義的に考えて、お多香さんは反論することが難しいでしょう。そこを考慮せずに、“例の件”を責め立てるのは視野が狭すぎるのではないでしょうか。テレビは難しいにしても、映画や美容など「興味のある客が、自腹を切る」経済活動に対して文句を言うのは筋違いだと思います。
しかしながら、十代で頂点を極めた彼女だからこそ、復帰は難しいのかもしれないと思うのです。なぜなら、こういうピンチの時に手を差し伸べてくる人は、本当に彼女のことを思っている人もいるでしょうが、彼女の抜群の知名度を今こそ利用したいとたくらむ、ヤバい人もいないとは言いきれないからです。
言うまでもなく、スターになる人というのはほんの一握りの選ばれし人なわけですが、スターにとって難しいのは、平穏に平凡に生きることなのかもしれないと思わされるのでした。
<プロフィール>
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に応えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」