一方、恋愛に頼らず題材ありきで描いたのが『石子と羽男』(TBS系)。主人公2人は仕事の相棒に終始し、その関係性の描き方を田幸さんは評価する。

「非常に丁寧な脚本で、身近な出来事が犯罪になりうるという面白さがありました。恋愛もベタな三角関係にせず、主人公2人を同僚で互いにかけがえのない存在として描いているのも良いところ。

 中村倫也さん(35)、有村架純さん(29)、その恋人役の赤楚衛二さん(28)が3人でハグするシーンはとりわけ印象的。なぜこの作品が視聴率2桁いかないんだろうという意味でガッカリドラマ。タイトルで法律モノではなく、恋愛モノと思われ、“見なくていいリスト”に入れた層が多かったのでは」

「#ちむどんどん反省会」SNS盛り上げるも……

 逆にSNSで話題になり途中から盛り上がるケースも多い。だが、

「今期は話題といえば朝ドラ『ちむどんどん』(NHK)一色。あらすじや設定もめちゃくちゃで連日SNSをにぎわし、“ちむどん祭り”にほかがのみ込まれた感が。ある意味今年の夏ドラとは“ちむどん”の被害者」と分析する。

 出だしでつまずき、イメージを挽回できないまま最終回を迎えたのが『純愛ディソナンス』『初恋の悪魔』の2作。

「『純愛ディソナンス』の惨敗の理由のひとつが恋愛ものにしか見えないタイトルで、

 “ディソナンスって何?”とわかりにくさも追い打ちをかけた。教師と生徒の禁断の愛というテーマに嫌悪感を抱く人も多く、“またこれをやるのか”と敬遠されたようです。でも教師役の中島裕翔さん(29)、生徒役の吉川愛さん(22)など、役者も役柄にはまっていたし、サスペンス的な展開もあって、個人的には面白く見てました。

『初恋の悪魔』は坂元裕二脚本で、キャストも林遣都さん(31)、仲野太賀さん(29)をはじめうまい人ばかり。欠点のない布陣で臨んだけれど、本当に面白くなるのは4回目くらいからで、ライトなドラマ視聴者には取っつきにくさがあったのかも。両方とも見れば面白いのにみんな見なかった。そういう意味でガッカリドラマ

 視聴率には恵まれなかったものの、一部のコアなファンから支持を集めたのが『新・信長公記』(日本テレビ系)と『雪女と蟹を食う』(テレビ東京)。いずれも漫画原作からのドラマ化。

『新・信長公記』は戦国武将が学園のトップを争うというバカバカしいおかしさがあった。小澤征悦さん(48)、濱田岳さん(34)などバイプレーヤー勢も豪華で、深夜の30分枠でやったほうがその面白さが出たのでは。

『雪女と蟹を食う』は映像も映画的で美しくキャストもぴったり。グルメあり、旅ありと、テレ東らしさが贅沢に詰まった作品で、それでいて生と死を丁寧に描いていた。もともと深夜帯で数字の取れる枠ではないけれど、よくできた作品だったと思います」