目次
Page 1
ー 滝沢秀明が背負っていたもの
Page 2
ー ヒットメーカーでリスク回避のプロ
Page 3
ー なぜ立て続けに発表があったのか

 

 芸能プロダクションの中で断トツの売上高を誇るジャニーズ事務所が激震に見舞われている。もっとも、滝沢秀明氏(40)の副社長退任の予兆は1年以上前からあった。

今回の動乱は滝沢氏が10月31日付で退任したことから始まった。11月4日にはKing&Prince岸優太(27)、平野紫耀(25)、神宮寺勇太(25)の3人が来年5月をもってグループを脱退することが発表された。3人とも来秋までには同事務所も離れる。

 筆者は昨年9月、芸能プロダクション幹部たちの話に基づき、滝沢氏の厳しい状況を『週刊女性PRIME』に書いた(『ジャニーズ事務所は新時代へ、滝沢副社長の課題とメリーさんに学ぶ「帝国」の築き方』)。

 各芸能プロは強力なライバルであるジャニーズ事務所の動向を常に気にしている。

《(滝沢氏は)クリエイティブなことは全面的に見ているし、会社運営にも関与している」(芸能プロ幹部)》

《(滝沢氏は)ほかの芸能プロから「オーバーワークではないか」と見られるほど役割が多い。2019年、タレントから経営者側に転身したため、補佐役のスタッフがいないことも背景にはある。

 滝沢氏の右腕の不在。目下のところ、これが同事務所の水面下での一番の問題点として挙げられる(2021年9月24日付『週刊女性PRIME』)》

滝沢秀明が背負っていたもの

 滝沢氏はクリエイティブ面のほぼ全てを見ていた。新人発掘から育成、プロデュース、ステージの演出……。ほかに海外進出の推進やデジタル面強化の旗振り役でもあった。しかし、芸能プロ幹部たちは「今のままじゃ続かない」と口をそろえていた。

 今回の副社長退任もオーバーワークと右腕役の不在が1番の理由と見て間違いない。それが解決する見通しも立たないから退任したのだ。

「事務所の先輩に補佐してもらえば良かったんじゃないか」という声が上がるかも知れない。だが、同事務所は先輩と後輩の上下関係がしっかりしているので、滝沢氏が先輩に助力を求めるのは難しかった。

 滝沢氏が2019年9月に副社長に就任してから1年以上が過ぎた2020年11月、東山紀之(56)はこう言っていた。

「タッキーが副社長になってくれてよかったですよ。ジャニーさんがやっぱり託すことができたんで」(TBS系『サワコの朝』2020年11月21日)

 東山に悪気は一切なかっただろうが、副社長に対する言葉ではない。サラリーマン経験者なら分かるはずだ。ほかの先輩たちも最後まで東山と同様の物言いだった。会社のナンバー2で役割は多く、責任も重いのに、いつまでも後輩扱い。滝沢氏の同事務所内でのやりにくさは容易に想像できる。

 創業社長で3年前に他界したジャニー喜多川さん(享年87)が滝沢氏の才能を大いに買っていたのは知られている。プロデューサーとしてなら第2のジャニーさんになれたかも知れない。

 ただし、ジャニーさんと滝沢氏には表面からは見えない大きな違いがあった。ジャニーさんには昨年亡くなった姉で元会長のメリー喜多川さん(享年93)がいて、営業統括や組織管理を一手に引き受けていた。それだけではない。凄腕の補佐役たちがそろっていたのだ。