口にしにくいお悩みにDr.野垣がアドバイス!
お尻の問題はデリケートなだけに相談しにくく、長年放置してしまう人もいる。もしかしたら、今感じている違和感は、別の病気の可能性も……。あなたのお尻は大丈夫?
※先生のもとに多く寄せられる悩みから紹介。
お悩み(1) いつも便がスッキリ出ない。まだ出るような気がしてトイレが長くなりがち
「内痔核が腫れているのを、肛門内に便が残っている感覚と勘違いしている可能性があります。内痔核は、進行度によって4段階に分けられます。この方の症状は中程度の2度といったところで、排便時に脱出するが、自然に肛門に戻る状態。急を要する事態ではありませんが、排便時にいきむことで、これからさらに悪化するおそれがあります。いきみすぎは禁物、気になるなら受診を」
お悩み(2) 便秘ではなく軟便体質なのだが、拭いたトイレットペーパーに血がつくことがある
「可能性のひとつは、内痔核からの出血。便が硬くなくても、出血するケースもあります。もうひとつ考えられるのが、『潰瘍性大腸炎』です。国から難病指定されている病気ですが、初期であれば薬で十分症状が抑えられます。痔で受診される方のなかに、この病気が出血の原因だったという場合も多く、私も年間300人ほどの患者さんを診ています。出血が見られた場合は早めの受診をおすすめします」
お悩み(3) 産後、お尻を触ると、あずき大のイボのようなものがある気がする
「出産の際にいきむと、外のイボ(外痔核)が腫れる場合があります。時間の経過とともにおさまることもありますが、潜在的に持っている内痔核とつながり、『内外痔核』といわれる症状に進行してしまうと、手術が必要に。婦人科で相談すると、薬による治療が施されますが、一時的なケアに過ぎず、根本的な解決にはならないことも。肛門科を受診し、適切な処置をとるべきです」
お悩み(4) 夜中に肛門が我慢できないほど痒くなることがある
「痒みは、風呂上がりや就寝中など、身体が温まったときに起きやすくなります。肛門であれば、拭きすぎや洗いすぎにより皮膚が傷み、痒みにつながる場合も。また、内痔核により便の汁が肛門から流れ出てしまうことも原因として考えられます。汁は酸性で、皮膚につくと痒みが生じます。皮膚科に行けば塗り薬の治療で一時的に回復はしますが、内痔核が原因である限り、根本的な治療をしないと痒みが繰り返し起きてしまうでしょう」
スッキリ出ないときこんな技も!
●足を台にのせる
洋式トイレに座る際、ティッシュペーパーの箱の高さ程度の台に両足をのせると、腸が便の出やすい角度に。「和式トイレでの姿勢に近い状態になるからです」
●ワセリンを塗る
ワセリンは潤滑剤であり、肛門に塗っても害はない。「肛門の奥に指を入れなくても、入り口に塗るだけでも効果があります」
●温水洗浄便座で洗っておく
「本来の使い方とは異なりますが、便を出す前に肛門を濡らしておくことで便の滑りが良くなります」。切れ痔の予防にも。
教えてくれたのは……野垣岳志先生 ●野垣クリニック院長。香川大学医学部卒業後、消化器外科医として10年勤務したのちに家業である肛門外科医の道へ。2020年4月より野垣クリニック院長就任。10年間で8000人以上の肛門の手術を執刀。
〈取材・文/川島光明(6線ストライプ制作)〉