悪意がないため判断が難しい
「刑法上は『偽計業務妨害罪』が成立する可能性はありますが、通報者に悪意はなく、彼らからしたら本気で困って電話をしているので判断が難しいんです」
と、処罰する刑法はあっても実際に施行には至らないという。
2022年の不要不急とみられる通報は2021年と比べておよそ1.3倍に急増している。自分勝手な通報をする人が年々増えている背景には何があるのか。
“過剰行動”をする人々の取材をしているジャーナリストの渋井哲也さんは、コミュニティーの縮小をあげる。
「頼れる人が周りにおらず、閉鎖された環境にいる人が多い。ここに一因があると思います。その上で解決したいんだけれど自分には解決能力がなく、さらに周囲にも解決してくれる人もがいない。それでいきなり110番というのは普通に考えたら極端だとは思うけれど、他に頼るものがない彼らは他にやりようがないのだと思います」
以前に比べて増えているのはなぜ?
「問題解決能力のない人が増えたということがあげられます。自分で困りごとに対処できない人は、それまでの人生において問題解決をした経験値が不足しているのでしょう。ルールは守るがそのルールが破られたときにどう解決するかを学んでこなかった人が多のではないか。
もうひとつは、待てない人間が増えているように思います。例えば、テレビがうつらない、時計が壊れたという通報はメーカーのカスタマーセンターに電話すれば済む話ですよね。でもカスタマーセンターは手順が複雑です。場合によっては30分以上待たされるケースもある。そんなときに、緊急で対応してくれる110番という発想になるのではないかと。さらに何らかの権力を持って問題を解決したいという他力本願な考えもあるのかもしれません」
と、渋井さん。続けて、
「警察庁や警視庁には緊急を要しない相談専用のダイヤルがあります。その普及がうまくいっていないことも一因かなと。まずはそういった相談ダイヤルの存在を広く周知することで不要不急の通報が少しは減るのではないでしょうか」