「ジャニーさんは女子高生の目を持つ」

 ジャニー氏の眼力は凄まじかった。ファンならご存じの通り、滝沢氏や松本潤(39)らは10代前半のころは突出した存在には見えなかった。ところが、ジャニーさんはやがてスターになると確信していた。

 音楽業界などでは「ジャニーさんは女子高生の目を持つ」と言われた。確かに女子高生が「この子はカッコ良くなる」と評した少年は男前になることが珍しくない。ジャニー氏はセンス抜群だった。

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 そのジャニー氏が他界し、滝沢氏も去った後、誰が将来のスターを見抜けるのか。事務所の大きな課題に違いない。

 滝沢氏はテレビ各局のトップを相手とする営業活動、タレントらの相談相手なども1人で務めていた。営業はほかの人間も代わりが務まるだろうが、タレントの相談相手はどうするのか。

 その存在が不在だと、「自分は冷遇されている」などと考えるタレントも出てくるだろう。また退所者が出る可能性がある。それでは会社は継続しようが、先細る。

 事務所自体は企業としてのアップデートが進んでいる。昨年6月にはNHKから大物理事(民間企業の元・役員)を顧問として招き、幹部にも大手広告代理店出身者がいる。コンプライアンスの強化や新事業の展開、必要に応じてのデジタル化などはスムーズに運ぶはず。

 むしろ心配されるのはジャニー氏、メリー氏が築き上げた古き良き事務所の伝統が守れるかどうか。メリー氏は自分に反旗を翻したタレントを除くと、かわいがり、守った。それが「うちの子たち」という独特の呼び方に表れた。ほかの事務所のように「うちのタレント」とは言わなかったのである。

 平野紫耀らの退所を止められなかったのはハッキリ言って痛い。勿体ない。事務所側は「うちの子」という感覚で接したのだろうか。

取材・文/高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)放送コラムニスト、ジャーナリスト。1964年、茨城県生まれ。スポーツニッポン新聞社文化部記者(放送担当)、「サンデー毎日」(毎日新聞出版社)編集次長などを経て2019年に独立。