果たして『視察』という言葉が適当なのだろうか。
テレビメディアが報じる「トルコ視察のガーシー議員」のテロップ。
トルコ大地震の被災地に足を運び、被災状況を見ることが無駄とは切り捨てられないが、なぜ今なのか。NHK党のガーシー参議院議員の行動は明らかに有権者をイラ立たせている。
8日の参議院本会議で陳謝する予定になっているが、日本時間7日未明に日本メディアの取材を受けたのはトルコの地で、だった。長期滞在先のUAEのドバイから直接帰国すれば優に間に合ったものの、なぜか行き先はトルコ。さらに7日の夕方、テレビの取材を受けて「帰国はしない」と明言し“陳謝動画”の存在があると明かした。
「国会議員ですから視察という名目は成り立ちますが、彼の行動によってメディアも振り回される。大地震の現状を報道するクルーが、ガーシー議員の動きを追うわけですから、その無駄さといったらないでしょう。議員報酬1800万円は党に預けているといっていますが、彼が国会に出ないことで、与野党の議員が処分を決めるために振り回されたり、メディアが振り回されたりすることで、多くの時間とお金が失われている。本当に迷惑でしかない」
と民放報道局ディレクターもイライラ度マックスだ。
被災地で食事を頬張るガーシー議員
トルコで取材を受けても、被災状況を訴えるわけではなく、帰国に関する煮え切らない態度を説明するだけ。当初、帰国して陳謝すると明言していたにも関わらず、帰国はするが8日に帰るかどうかはわからないと前言をいとも簡単に撤回する始末。
地震発生から3月6日でひと月が経過したが、NHKの報道によれば、テントでの避難生活をしている人は144万人。水や食料などの支援も行き届いていないという。
そんな中でガーシー議員は、がれきの中に設置されたテーブルで食事を取り、親指を立てるサムズアップでおいしさをアピールするなど避難生活とは乖離した笑顔の映像が流れ、それがまた視聴者をいら立たせている。
以前、熊本地震の被災状況を伝えるために現地入りした民放アナウンサーが、《やっと今日の1食目。食料なかなか手に入りにくいです》とツイッターしたところ、これが大炎上。
取材者も人間、食べないわけにはいかないが、被災者が食料不足に苦しんでいる中、やはり弁当やラーメンなど食事について伝えるのは不適切であるとして、アナウンサーは全面謝罪。テレビ局も「食事を取れない被災者の方が多くいる中で、配慮を欠いた行為」と平身低頭したことがある。
ガーシー議員の食事の場面は、そんな過去の記憶を有権者に呼び覚ましたのではないだろうか。
税金泥棒の汚名から逃れることはできない
SNSで動画を発信することにはマメで「めっちゃやさしいよ、みんな。どうしても連れて行きたいケバブ屋があるって、朝の4時くらいに起こされてケバブ食べさせられました」と、視察とはかけ離れた情報を伝達。
「買いためた救援物資を配ろうかなと思っています」と被災者支援の姿勢を示したが、何を買いためて、誰に配るのかといった詳細には踏み込んでいない。
初当選以来、一度も登院することなく議員歳費1800万円がガーシー議員の懐に入った。が、「歳費は返すつもりで、これで税金泥棒と言われる筋合いはない。1800万円は手につけません」「国民からいわれている文句を一つ一つ消していこうと思っている」と言い放っている。民放国会担当記者は次のようにあきれ果てる。
「ガーシー議員の処分を検討する懲罰会議を行うなど、他の国会議員に余計な仕事をさせていることがもう“税金泥棒”なんです。ご本人が議員報酬を党に返しても議員報酬をもらった、という事実は消えません。さらにN党は国庫から3億3400万円の政党交付金を受け取っている。この金額は、所属する国会議員数や過去の国政選挙の得票数に応じて配分されるもので、N党の場合、比例代表選挙の得票率が2%以上でしたから、交付の対象になっています。その際、ガーシー議員は28万7714票を獲得し、党勢に大きく貢献しました。いいかえれば、ガーシー議員のおかげもあり、N党はより多くの政党交付金を受け取れているのです」
ガーシー議員が「国民からいわれている文句を一つ一つ消していこうと思っている」というとおり、文句が一つではないことは自覚しているようだ。どんな手を打とうが、“税金泥棒”の汚名から逃れることは、当面できそうもない。