夜明け前の住宅街にパトカーのけたたましいサイレンが鳴り響いた。
「何事かと飛び起きました。パトカーがあの家の周りに計5、6台集まり、急病とかではなく事件だと直感しました。そういう騒ぎとは無縁のお宅だったし、あのお兄さんが妹さんを刃物で襲うなんて……」
と近所の女性は振り返る。
3月18日午前3時40分ごろのこと。千葉県柏市の民家で、ベッドで寝ている妹の左腕や右足などを出刃包丁で複数回切りつける事件が発生。同居家族の110番通報で駆けつけた県警柏署の警察官が殺人未遂の現行犯で逮捕したのは、この家で同居する被害者の兄で自称無職・江口弘晃容疑者(44)だった。
妹は病院に救急搬送されたものの、命に別状はないという。
妹夫妻の家に居座った兄が…
「今は立派なご自宅ですが、約8〜9年前に妹さん夫婦が高額なローンを組み、古くなった実家を建て直したんです。お兄さんはお金を出さなかったといい、母親とお兄さんは妹さん家族に居候しているようなかたち。父親は亡くなっており、妹さんにしてみれば母親の面倒はみたいかもしれませんが、お兄さんは……。独身で自立する気配がないようです。一家揃って出かけるのを見たことがありませんし、兄妹間の微妙な空気は薄々感じていました」(近所の別の女性)
江口容疑者は職に就いていた時期もあった。さらには仕事のかたわら33歳の頃に趣味で始めたブラジリアン柔術にのめり込み、試合にも出るように。16年には、さいたまスーパーアリーナで開催された総合格闘技団体『RIZIN』の柔術トーナメントで、年齢層と強さを示す帯色別に分けた下位クラスながら、ヘビー級と無差別級でいずれも優勝するなど結果もついてきた。
ブラジリアン柔術の関係者はこう話す。
「寝技を軸とする戦略性の高い格闘技で、社会人から始めて数年で極められるほど甘くない。2階級制覇したのは立派だが、だからといって格闘技で食べていけるようになるわけではない。江口容疑者は結果を出し続け、38歳で総合格闘技のプロデビューを果たすところまでいった。リングネームは『アニマル江口ゴリオ』だ」
身長171センチ、体重100キロ。2017年12月、東京・ディファ有明で総合格闘技団体『DEEP』が主催する大会のメガトン級(無差別級)でデビュー戦に挑んだ江口容疑者は、約10キロ軽いブラジルの柔術選手に1ラウンドでチョークスリーパーをきめられタップ。“中年の星”になり損ねた。