異動先は「ただ1日、座っているだけ」

「久しぶりに職場に行くと、業務隊という部署に異動させられていました。逮捕された日に異動したことになっていて、そのことは職場の人も知りませんでした。

 異動先はけがや病気で、今現在働くことができない人が集まっている部署です。なんの仕事も与えられず、ただ1日、小部屋で座っているだけ。エアコンも4年ほど前に壊れていてつきません。寒いときは部屋の気温は10度ぐらいになります。ケガをしている人を療養させるにしては寒すぎるし、新型コロナウイルスの対策もまるでなし。逮捕されたとはいえ、結局、不起訴になっているのに、“まだ行政処分は残っているから”と、異動希望の話も却下されています。誰も信じられないし、夜も眠ることができず、精神状態はどんどん悪くなっています。病院に行ったところ、重度のうつ状態と診断されました」(Aさん)

 勾留が終わったあとのBさんも、不審な点を感じていた。

「私が選んだ弁護士について、“素行が悪い”“話し合いのゴールが見えているのに、わざわざ弁護士を介入させる必要はない”と、弁護士を外すことを何度も要求されたんです。私の母親にまで電話しています。明らかに不審な行動ですよね……」(Bさん)

 結果的に国を相手に裁判を起こすことになったAさんとBさん。これから裁判はどのように進んでいくのか、Aさんの担当弁護士にも話を聞いた。

「争点は、警務隊が出した逮捕状の請求と執行が正しかったのかどうかです。今回は“虚偽告訴罪”と言われていますが、これは客観的事実に反する懲戒請求をする、ということです。これからどういう証拠が向こうから出てくるか次第ではありますが、今回その答申書を書いた方々に私が直接話を聞いても、全員が“事実でないことは書かれていない”と言っているんです。もし本当だとしたら、逮捕はどう考えても違法です」

 4月から始まる裁判で、AさんとBさんが知りたいこととは……。

「どうして僕らに罪を着せてまで、X氏を守りたかったのかということが知りたいです」(Aさん)

「なぜ逮捕されなければならなかったのか、裏で何が起こっていたのか。この裁判を通して知りたいと思いますし、今後そのようなことがなくなればいいなと思っています」(Bさん)

 今回の件について、自衛隊のとある幹部に状況を聞いてみると、

「Aさんの裁判に対して、海幕は相当焦っているみたいですよ。不起訴で釈放されているのに、裁判に向けてのアクションなのか、Aさんを急遽、懲戒処分にするつもりだそうです。根拠として、“事実を誇張して書いて、X氏を貶めようとした”ということにする予定らしいですが、パワハラかどうかは認めていなくても、Aさんの告発内容自体は本当なんですね……」

 X氏のハラスメント行為や、急な懲戒処分が事実なのか、海上幕僚監部に問い合わせてみたが、

「現段階でお答えできることはありません」

 とのことだった。

 2人の逮捕理由は、裁判で明らかになるのだろうか。