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ー NHK、ジャニーズの性加害問題を積極的に報道
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ー NHKが忖度しない報道ができるわけ

 

 ジャニーズ事務所の創業者・ジャニー喜多川氏(2019年に87歳で死去)の性加害問題について、テレビ局がそろって報じるようになった。ほんの数か月前までの常識では考えられない。口火を切り、その後もいちばん積極的なのはNHKだ。

NHK、ジャニーズの性加害問題を積極的に報道

 発端はイギリスのBBC放送だった。3月7日、故・ジャニー喜多川氏の性加害問題に関するドキュメンタリー動画『J-POPの捕食者 秘められたスキャンダル』を配信した。続いて4月12日に元ジャニーズJr.のカウアン・オカモト氏(26)が被害を明かす告発会見を外国特派員協会で行うと、その様子をNHKが翌13日の午後4時の定時ニュースで報じた。これが一報だ。前代未聞のことだったので、この報道自体がニュースになった。

 この報道がなかったら、他局は沈黙したままだったかもしれない。他局の出方を見るというのは古くからのテレビ報道の特色だ。昨年7月からの世界平和統一家庭連合(旧統一教会)報道もそうだった。ましてジャニーズ事務所からは多数のタレントを供給してもらっているから、最大限に気を使う。また、同社と各局幹部には長く深い付き合いがある。

 5月14日夜、ジャニーズ事務所の藤島ジュリー景子社長(56)が動画で性加害問題を謝罪すると、民放も堰(せき)を切ったように報じたが、NHKが突破口を開いていたことが大きかった。この謝罪もNHKが最も大きく扱った。翌15日朝のニュース『おはよう日本』(午前5~同8時)では午前5時台、同6時台、同7時台のトップで報じた。

 NHKの報道は続いた。同17日には『クローズアップ現代』が「誰も助けてくれなかった 告白・ジャニーズと性加害問題」と題した特集を流した。被害を訴える元所属タレント6人を取材するという力の入った内容だ。『クローズアップ現代』以上にこの問題に深く切り込んだ番組はない。

 NHKもジャニーズ事務所との関係は深い。毎年、同社のタレントたちは『NHK紅白歌合戦』へ数多く出演している。昨年も6組出た(KinKi Kids、関ジャニ∞、King & Prince、SixTONES、Snow Man、なにわ男子が出演)。ほかの芸能プロダクションから不満の声が上がり続けているほどである。

 大河ドラマ『どうする家康』の主演も嵐の松本潤(39)だ。岡田准一(42)も出演している。このため、NHKの性加害問題に対する報道姿勢を“意外”とする論評も新聞に掲載された。

 もっとも、芸能界の諸問題を最も積極的に報道するのは従来からNHKなのである。たとえば2017年、清水富美加(28)が宗教団体「幸福の科学」系の事務所に移籍し、千眼美子として活動することになり、前所属事務所とトラブルになった際も『クローズアップ現代』は取り上げた。「芸能人が事務所をやめるとき ~“契約解除”トラブルの背景を追う」と題した特集を組んだ。

 民放の情報番組にも千眼の問題を扱うところがあったものの、いずれも淡泊。論調は千眼を責めるようなものが目立った。一方で『クローズアップ現代』はフラットな視点で報じ、「芸能界で独立はなぜトラブルになりやすいのか」「事務所と芸能人はどんな契約を交わしているのか」といった根源論にまで踏み込んだ。