男性は高齢であっても身体的に健康であれば可能
精索静脈瘤は精巣から心臓へ戻る血液が逆流してしまい、静脈が瘤のようになる病気。乏精子症・精子運動率低下の35%は精索静脈瘤が原因で、一般男性の15%、男性不妊症患者の40%以上に認められるという。ただ、手術を行えば精子をつくる機能の改善も期待できる。
「先述したとおり、男性は高齢であっても身体的に健康であれば子どもを持つことができます。健康寿命が延びたため、生殖機能を持つ年齢が延びている可能性はあります」
性行為をする体力さえあれば、アル・パチーノのように高齢でもパパになれるということか……。
「以前は70代ともなるとEDになる方は多かったのですが、バイアグラなどのED治療薬が開発され、70代でも20代と同じくらい性交能力(勃起機能)を維持できています」
米・ファイザー社が世界初のED治療薬としてバイアグラを発売したのは1998年。それ以降、性交能力は格段に向上したといえるだろう。しかし、世の中は少子化傾向。男性の性機能向上は少子化と関係ない?
「第1子を授かる年齢も上がっています。それは、仕事や経済的なことで妊活が先延ばしになっているためと思われます。高齢で性交能力のある男性が増えたとしても、男性も女性も若い時期のほうが子どもをつくりやすいです。妊活を先延ばしにしていると、少子化にはなると思われます」
あまり少子化の歯止めには結びつかなさそう。ちなみに、ロイターの報道によると、世界最高齢の父親は96歳で、インドのラマジット・ラグハブさん(2012年当時)。精力増強剤などは使っておらず、妊娠のために特別なことはしていなかったとか。
少子化が問題視される一方で男性の生殖能力は延びているのだった。
ながお・こういち 東邦大学泌尿器科教授。男性不妊ドクターズ理事長、東邦大学泌尿器科教授、日本生殖医学会生殖医療専門医(泌尿器科)。マイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域(主に陰茎・陰嚢)の形成外科的手術を得意とする