川上家ゆかりの地で猫の保護活動の日々

 '93年から、ガラス工芸制作の活動をスタートさせた。現在、ガラスデザイナーとしての顔も持つ彼女のガラス工芸歴は、なんと30年である。

人と猫が心地よく共生していくための提案や、猫好きな仲間たちが楽しく交流できるWEBサイト「NYANAKATOWN(にゃなかタウン)」をオープンさせた 撮影/矢島泰輔
人と猫が心地よく共生していくための提案や、猫好きな仲間たちが楽しく交流できるWEBサイト「NYANAKATOWN(にゃなかタウン)」をオープンさせた 撮影/矢島泰輔
【写真】雑魚寝や旅行をする仲だったという故・志村けんさんとのツーショット

「スウェーデンは“ガラスの王国”と言われているぐらいガラス工芸が盛んで、私も昔からスウェーデンのガラスを集めていたんです。それを知ったNHKの方が、ガラスをテーマにした特集番組に私を呼んでくださって。その番組で講師を務めていたガラス工芸作家の石井康治さんに『そんなにガラスが好きだったら、工房に一度吹きにいらっしゃい』と言われ、すぐに体験しに行ったんです。それがもう本当に面白くて、すぐにハマってしまい、本格的にガラス工芸を始めた感じですね」

 川上が2016年にオープンした『SWEDEN GRACE』は、スウェーデンの北欧小物と彼女が制作したデザインガラスを展示・販売するセレクトショップだ。

 店の前には、川上がスウェーデンで赤ちゃんのころに使用していたという、クラシックなベビーカーが置かれている。川上家の物持ちのよさと、家族仲のよさがうかがえるようだ。

「芸能の仕事もありますから、すべての営業日に店に立つことはさすがに無理なのですが、意外にいますよ(笑)」

 現在の川上の活動には、3本の柱がある。俳優業と、ガラスデザイナーとしてのショップ運営、そして猫の保護活動だ。

「今、家で飼っている2匹の猫ちゃんは、どちらも保護された子です」

 保護活動の中でも現在、最も力を入れているのは、ウェブ上に作った猫と人が共生する街『NYANAKA TOWN(にゃなかタウン)』の運営だ。

一般社団法人『neko–to–kyo』の立ち上げ

「2018年に『neko–to–kyo』という一般社団法人を立ち上げたんです。徹底的に猫に取り組もうと思って、猫について勉強できる飼い主さんのためのアカデミーも設立しました。猫の飼い主さんって、横のつながりが少ないですよね。『NYANAKA TOWN』に登録してもらえれば、猫の困ったことが起きたときに対応できるようになっています」

 猫を好きになったのは、18歳のころ。実家でペットが飼えなかったので、「ひとり暮らしをしたらペットを飼いたい」と決めていて、犬のシーズーを飼うつもりだった。しかし、ペットショップに行くとそこにいた猫のヒマラヤンと目が合ってしまい、それからは急速に猫派へ。ちなみに、『SWEDEN GRACE』は東京・千駄木に位置する。“猫の街”として知られる谷根千エリアだ。

母・玲子さんと。ビジネスパートナーとしても大切な存在だという
母・玲子さんと。ビジネスパートナーとしても大切な存在だという

「父がこの辺りで育って、川上家のお墓が谷中にあるんですね。たまたまなんですけど」

 猫の活動を始めたのは、保護猫ボランティア団体の代表から「保護猫の譲渡会の会場として店を使わせてほしい」と依頼を受けたことがきっかけだった。

 俳優を志したいきさつも、皆から一目置かれる演技派俳優になったのも、ガラス工芸作りや猫の保護活動を始めた経緯も、何かしらの力が作用し、彼女は導かれてきたような印象を受ける。

「本当にそうですね。そういうことがなかったら、道はなかったのかもしれない」

 節目節目で流れに乗り、いつしかその道の本格派になっている。

 記事冒頭では否定したが、川上麻衣子という人はやはり“生粋”という言葉がしっくりくる気がする。

<取材・文/寺西ジャジューカ>
てらにし・じゃじゅーか 1978年東京都生まれ。数年間の他業種での活動を経てライターに転身。得意分野は、芸能、音楽、(昔の)プロレスと格闘技。『証言UWF』、『証言1・4』、『証言 長州力』(いずれも宝島社)などに執筆。