「手を出したり、所有物を壊したりするような有形力の行使はなかった。悪口などを言った、言わないの話」(前出・捜査関係者)
周囲が問題視していたのは被害者の美崎さん
現場近くの女性住民はこう打ち明ける。
「双方のトラブルはご近所では知られた話です。亡くなった人を悪く言うのは気がひけますが、周囲が問題視していたのは美崎さんでした。いわば酒乱で、口喧嘩の相手は中馬容疑者だけでなく、複数の周辺宅に“水が漏れてくる”とか“音がうるさい”“ペットの鳴き声をどうにかしろ”などと些細なことでクレームをつけて騒ぎました。独居生活の寂しさから偏屈になったのかもしれません。ターゲットになったお宅は引っ越したり、相手にせず我慢していた。中馬容疑者は神経質なところがあるため無視できず、まともに対応してしまったのでしょう。中馬容疑者は何軒か先の門扉を開閉する音にも過敏で“気をつけてください。母が寝ているものですから”と何回か注意しています」
地元住民らによると、美崎さんは周辺では最も古い住民。生命保険の外交員をしていた母親の収入で暮らしていたが、やがて母親は認知症を患い10年以上前に逝去。酒に溺れるようになり、周辺宅の塀を棒切れで叩いて歩き回るなど奇行が目立つようになった。
「美崎さんはお酒を飲まなければ実におとなしく、普段は“お花きれいですね”と話しかけてくるなど気の弱そうな男性なんです。ところがお酒が入ると人格が変わり、“ギャーオ!”と言語不明瞭な叫び声をあげるようになるんです」(前出の女性住民)
美崎さん宅の玄関先にはサボテンなどの植木があり、丁寧に育てていた様子がうかがえる。また、最近は目撃されていないものの海外有名ブランドのマウンテンバイクを乗りこなすなどアクティブな面もあったという。
一方、中馬容疑者は母親と2人で暮らしていた。仕事が長続きせず、清掃やチラシ配りのアルバイトなどで収入を得ていたようだが、一家の生計を主に担うのは母親。つまり、かつての美崎さんと似た生活を送っていたといえる。認知症の母親を看護していた美崎さんと、母親と仲良く出かける姿が頻繁に目撃されていた中馬容疑者は、互いに歩み寄ったり理解し合えたりしなかったのか。