この障害が診断されるためには、それが本人に苦痛をもたらしていたり、日常生活に支障をきたしていたり、あるいは他者に危害を及ぼしたりしている必要がある。

 パラフィリア症には、大きく分けて2種類があり、1つは「性的対象」が非定型的であるケース、もう1つは「性的満足を得る方法」が非定型的であるケースだ。

 前者には、子どもを性的対象とする小児性愛症、同意のない相手に対するその他のパラフィリア症(動物や死体などへの性行為)などがある。後者には、窃触症(痴漢行為)、露出症、窃視症(のぞき、盗撮行為)などがある。いうまでもなく、このような同意のない、あるいは同意できない相手を対象とする性行為のほとんどは、性犯罪を構成する。

 今回は、おそらく小児性愛症であると判断されたと思われる。小児性愛症は、通常被害者が13歳以下のケースを指し、男性の場合、女性の場合、さらに男女両方である場合がある。

性的行為の強要は著しい人権侵害

 子どもはもちろん、性的行動に対して、同意できる能力を有していない。こうした発達途上の相手に対し、性的行為を強要することは、著しい人権侵害であり、被害者にとっては長期間にわたる心身への悪影響をもたらすことがある。

 被害者のなかには、13歳以上の人もいたと思われるが、その場合はその行為は小児性愛症に基づくものとは言えない。しかし、被害者が同意していない、あるいは加害者との関係性や恐怖心から拒むことができなかったのであれば、それは強制性交や強制わいせつ(2023年7月に改正された刑法では、不同意性交、不同意わいせつ)に当たる可能性があり、やはり犯罪である。