そして、これは彼にとって賢明な選択だったのではないか。恋愛を繰り返すような男性は「獲物」を常に追いかけたいというハンター気質の持ち主。その獲物を女性ではなく、獣にしてしまえば、恋愛でやらかすことを避けられるからだ。
ただ、メジャーな意味でのイメチェンにはなっていない。
例えば、今年の4~6月期に『ケイジとケンジ、時々ハンジ。』(テレビ朝日系)というドラマが放送された。3年前に東出と桐谷健太がダブル主演した『ケイジとケンジ』の続編だが、東出は出てこない。前作が不倫騒動でダメージを受けたせいか「前にここにいたでっかい検事」(初回のセリフより)という存在にされてしまった。
善人も悪人も“ハマる”存在
その一方で、マイナーなイメチェンには成功している。
'21年以降、大作ではない映画に立て続けに主演。なかでも、詩人・三好達治を演じた『天上の花』では妻への愛情を制御できずにDVに走る芝居が怪演と評された。
ときに「棒読み」「大根」などと揶揄もされるが、俳優・東出には独特の持ち味がある。大柄なうえ、イケメンのわりに目力がなく、どこか茫洋とした感じが何を考えているのかわからない雰囲気を醸し出し、善人役で使えば、優しいお人よしのキャラにもなるし、悪人役をやらせれば、サイコパスな犯罪者にもハマるのだ。ワイルドな怪優路線に思い切り舵を切ることで、活路が開けるかもしれない。
ちなみに、彼がバッシングされたのには朝ドラの呪縛のようなものも関係していた。NHKの朝ドラでヒロインの相手役を演じると、国民的な好感度が発生。
彼の場合『ごちそうさん』で共演した杏と実生活でも結婚してその好感度をさらに上げていたことが、不倫による反動を大きくしてしまったわけだ。
そういう意味でも、舵の切り方は派手なほうがいい。東出の復権は「俳優/猟師」というパワフルな肩書が定着するか、にかかっているのだ。
ほうせん・かおる アイドル、二次元、流行歌、ダイエットなど、さまざまなジャンルをテーマに執筆。著書に『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)。