よく言えば気配りが細かい、悪く言えば抜け目も如才もないことが仇となり、権力者を喜ばせる、つまり性加害を連想させるエピソードがわんさかたくさん出てきて、炎上する可能性は十分にあります。しかし、見方を変えれば、仕事をエサに権力者のために性暴力に加担させられた被害者とも言えるのです。
被害と加害がほぼワンセットという現実を忘れてはいけない
加害者と被害者は正反対のポジションにあると思われがちですが、実はそうとも言い切れません。たとえば、運動部や会社で新人の頃、先輩に理不尽なことを要求されてつらかったのに、自分が上級生となったら、いつのまにか後輩を同じようにしごいていたという経験を持つ人はたくさんいることでしょう。性加害を含めた暴力は、連鎖しやすいことがわかっています。暴力を受けた被害者が今度は加害者となって、誰かを被害者にしてしまうのです。実際、喜多川氏も被害者だったという証言があります。「報道特集」では、‘60年代に喜多川氏と親交があった演歌歌手の男性を取材しています。男性は10代の頃、デビューを目指して「新芸能学院」で仲間とレッスンを受けていましたが、ここにジャニー氏とメリー氏が出入りしていたそうです。ジャニー氏はレッスン生に性加害を行い、そのことが原因で同学院の名和社長とトラブルになり決裂したといいます。名和社長の妻は「(ジャニー氏自身が)小さい時から(性加害を)されていた」「ジャニーさんはそういう育ちをした」「病気なんだわね」と周囲に説明していたそうです。被害を受けたから、加害していいという意味ではありませんが、被害と加害がほぼワンセットとなって繰り返されることを考えると、過去を掘り返すことに意味があると思えません。
喜多川氏の性加害については、2004年に最高裁が喜多川氏の少年たちへの性加害の真実性を認めても、ワイドショーなどで報じられなかったと記憶しています。マスコミが報じないことで、結果的にジャニーズ事務所は何をやってもいいんだ、言っても無駄だという空気が強化されたのではないでしょうか。
けれど、ようやく全貌が解き明かされようとしています。しかし、会見における記者の質問を聞いていて、私は首をかしげてしまったのでした。