その周辺には、コンサート・舞台・イベント等のチケット収入、グッズ販売による物販収入、CD販売による原版税などがある。内訳は不明ではあるが、ファン(コアファンとライトファン)による、直接的、間接的な収入がかなりの部分を占めると思われる。

 ファン以外も含めた幅広い層を対象にしたビジネスとしては、テレビをはじめとするメディアへの出演、企業や団体の広告への出演がある。現在のジャニーズは、この外堀から収益源が切り崩されているという状況にある。

 一方で、深刻なファン離れは現時点では起きていないように見受けられる。むしろ、現状の苦難の中で、コアファンを中心に「タレントを支えよう」という動きも見られる。まさに、「推し」の応援によって、事務所の土台が支えられているのだ。

「推しの応援」によって支えられてきたジャニーズビジネスだが…
「推しの応援」によって支えられてきたジャニーズビジネスだが…
【写真】嵐の大野智が描いたジャニー喜多川さん

 ジャニーズタレントのファンの裾野の広さと、コアファンの熱狂性を考えると、ファンの離反が起きない限りは、ジャニーズ事務所は安定的に収益を上げ続けることができる。

「ジャニーズ帝国」と呼ばれた大繁栄は望めなくとも、「ファンビジネス」に特化して生き残り続ける――という道も考えられなくはない。

 ただ、その道は非常に危ういものであるのもまた事実だ。

ファンビジネスにおける「諸刃の剣」

 ファンをつくる、すなわち「ファン化」を起こすためには、どうしても裾野を広げてのアプローチが必要になる。デビュー前のタレント、売り出し中のタレントならなおさらだ。活動の場を与えられることでファンがつき、人気が出ることで活動の場が広がり、さらにファンが増加する――という好循環をつくり出すことができる。

 ジャニーズはこの循環をつくり出す能力が非常に優れており、だからこそ多くのタレントの原石を集め、それに磨きをかけてデビューさせ、ファンを生み出すことに成功したのだ。

 所属タレントは、事務所側が大きな不祥事を起こして危機にある中で苦悩しているに違いないし、その中でタレントとしての活動機会が限定されていくと、モチベーションも低下しかねない。

 事務所に見切りをつけたタレントの退所が今後相次ぐことになれば、それに合わせてファンも離反していく。この雪崩現象が起きてしまうと、ジャニーズの崩壊も現実のものとなっていくだろう。

 9月7日のジャニーズ事務所の記者会見を見て、事務所側は所属タレントとファンには向き合っているが、スポンサー企業やメディアにはあまり気を配っていないように感じられた。

 人気のタレントを生み出し、そこにファンがついてきさえすれば、メディアと広告への出演は自動的に付いてくる――と、事務所側は考えていたような節がある。

 しかし、スポンサー企業(広告主)の多くはグローバル化しており、取引先に対するコンプライアンスの基準もグローバルレベルのものを求めてくる。依然として国内中心にビジネスをしている芸能事務所やメディアと比べると、厳しい基準を設けてくるのは当然のことである。

 リスクマネジメントは、最悪のシナリオを想定して、十分な策を講じる必要があるが、依然として東山紀之社長含め、内部で経営者を固めているジャニーズ事務所は、そこまで思い至らなかったに違いない。