図星すぎる男性の勘違いを描いたドラマ

女性に響いたドラマ『こっち向いてよ向井くん』出演の赤楚衛二
女性に響いたドラマ『こっち向いてよ向井くん』出演の赤楚衛二
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 『VIVANT』は男性ウケするドラマだった印象もあるが、逆に女性に響いたのは『こっち向いてよ向井くん』(日本テレビ系/TVerお気に入り数65.2万人)。

「序盤は主人公(赤楚衛二)による“男性の勘違い”を描いていて。女性から見ると“いるいるこういう人”“わかる”の嵐。SNSを見るとあまりに図星で、痛いところを突かれすぎるのがしんどくて、視聴をやめてしまった男性もいらっしゃったみたいです(笑)。でも“男性こそ見てよ!”という内容でしたね」

 1話の中での前半が男性主人公目線、後半は女性側の“答え合わせ”のような構成も面白かったという。

「男性による思い込みの男らしさ、やさしさ……いろんなものが指摘される痛快さがありました。でも赤楚さんが演じられているので、主人公はちょっとダメな可愛い人になっているのが絶妙でした。そんな人物が何かをきっかけに劇的に変わるのではなく、“これってダメなんだ”“これはどうしたらいいんだろう?”とひとつひとつ、トライ&エラーで学んでいく姿は美しかったし、好感が持てました」

 結婚に対する考え方もゆっくり変わっていき、居心地のよさが着地点となっていたところも田幸さんは高評価。

「よかれと思っていたことが、実はひとりよがりだった。実は恋愛だけじゃなくて、人間関係において必要な対話が描かれているドラマだったと思います。飲み友達(波瑠)や元カノ(生田絵梨花)、妹(藤原さくら)など登場人物がそれぞれ、すごくよく物を考える人たちだったところも好感が持てました」

きれいごとを言わない本気度

 水曜の夜、『こっち向いてよ向井くん』の真裏で放送されていた『ばらかもん』(フジテレビ系/TVerお気に入り数52.6万人)も良作だったという。

「原作マンガに比べるとちょっと笑いの要素は少なかったんですが、“漫画だからできること”を実写化でやろうとするとちょっと無理がある。そんなふうに笑いを取りにいって滑ったりせず、すごくおおらかな成長物語として描いていました。主人公を演じた杉野遥亮さんは“半田先生、そのまんま生きてる!”という感じで。ちょっと子どもっぽさもあるまっすぐなキャラクターのハマり具合、よかったです。子どもたちとのやり取りや、島のじいちゃん・ばあちゃんもそれぞれ魅力的で。小手先のテクニックに走らない、ど真ん中を行く感じの成長物語。そんな王道ドラマは、やっぱりひとつはあって欲しいと思いますね」

 同じくひとつはあってほしい学園ドラマとして『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』(日本テレビ系/TVerお気に入り数120.8万人)も今クール注目を浴びた。

「松岡茉優さんと芦田愛菜ちゃんという間違いのないキャスト。第1話でいじめにあっていた鵜久森さん(芦田)の長ゼリフと熱演を惜しみなく見せてくれて。あれは視聴者はもちろん、おそらく共演者たちも騒然としたんじゃないでしょうか?」

 さすが芦田愛菜プロ。そんな声がSNSにはあふれかえった。

「生徒たちも約500人のオーディションから選ばれただけあって、上手な子がすごく多かったですね。構成そのものはシンプルで、教室での長ゼリフというワンパターン展開だったかもしれませんが、何より若い人に伝えようとするメッセージ性がすごく強かった」

 それを説教臭いと感じる人もいたかもしれないが、

「やられた側の痛みはそう簡単に癒えるものじゃない。それをしっかり突きつけた。許せないことは、許せないでいい。クラスメイトがみんな友達なわけじゃない。きれいごとを言わず、その痛みを知る人の側にちゃんと寄り添って、代弁し、伝えようとした。その本気度がすごく伝わってくるドラマだったと思います」

 田幸さんは今回の夏ドラマをいろんな色合いと味が楽しめたと総括する。

「刑事ドラマばかり、医療ドラマばかり……過去にはそんな時期もありましたから。今夏は同じような作品が集中することなく、クオリティの高さに唸ったり、壮大なスケールにびっくりさせられたり。考察、王道、大らかな癒し……すごくお得感がありましたね。そして、それぞれ視聴者が楽しめたと思います。『VIVANT』を筆頭に、久しぶりにドラマが復活してきたように感じます」

 これから10月期の秋ドラマが続々とスタートしていく。またぜひ、たくさんのドラマに喝采をお送りさせてください!

※TVerのお気に入り数は9月29日現在