子どもたちは畑でテントを張り、大人は車上生活。電気が止まっていたので、車のエンジンを時々つけては、携帯の充電をしていたという。
「ブログを書き込むときだけ電源を入れて一気に書いて、それ以外は電源もオフ。携帯で連絡を取ることもあまりできませんでした」
そうした生活をしながらホテルも探したが、どこも満室。ようやく小さな旅館が見つかったものの、大部屋で1か月くらいを過ごすことに。そんな悲惨な状況にもかかわらず、“不幸自慢”などとブログのコメントでは誹謗中傷もあった。
「自分が体験したことをリアルに発信していました。なのに、なんでこんなふうに考える人がいるんだろうと当時はすごく気持ちが落ち込んで」
被災した苦しい状況の中でこれ以上傷つきたくない、とコメントを読むのもブログを書くこともやめたという。そんな被災体験を乗り越えつつ、現在も熊本で暮らしている。
葛藤はあったがどうにかなるもの
震災が起きてから7年以上が経過したが、今もその心の傷は消えたわけではない。
「SNSについて今はインスタグラムをメインに発信していますが、誹謗中傷は見ないようにすればいい。自分軸で発信するようになりました」
そして、地震によって学んだことを風化させないことが大切だと語る。
「たまに地震があるとフラッシュバックすることはありますが、子どもたちはトラウマになっていないようで本当に良かった。恐怖の記憶など何もかも風化させないというのではなく、経験を活かしてこれからどう備えられるかだと思うんです」
現在は家族と自然農法で畑を耕し、陶芸にも挑戦する日々。さまざまな経験を積み重ねながら、力強く前に進んでいる。
井上晴美●1974年9月23日生まれ。熊本県出身。1991年、16歳で芸能界入り、ドラマ・映画・舞台など数多くの作品に出演。2005年に結婚し、現在は3児の母。日常をインスタグラム(@harumi_inoue_)でも発信中。
(取材・文/諸橋久美子)