これが最後の曲だと思うと肩の力が抜け、幸せな気持ちで歌うことができた。結果として『まちぶせ』は大ヒットとなり、『紅白歌合戦』にも出場し、歌手活動を続けることに。
「この曲を多くの人に愛してもらえて、やっぱりこれからも歌っていきたいと思い直すことができました。中学生のころ、好きな人を待ちぶせした経験は私にもあり、共感してくれる人が多かったです。好きだと言えない相手にこのレコードをプレゼントしたという話もよく聞きました」
「うつるからプールに一緒に入らないで」
こうして歌手として不動の地位を築いた石川さんだったが、27歳のときにB型肝炎を患い、闘病生活を送ることに。
「初のミュージカルの舞台稽古をしているときに、疲れがとれず身体がだるい日が続きました。ある日、めまいで倒れ病院へ。するとめまいとは別にその日の血液検査で偶然にB型肝炎を発症していることがわかり、再検査の結果、即入院と診断されて……。舞台は降板し、入院は40日間、その後も1年間の自宅療養が必要でした。B型肝炎は体調がよくなってもウイルスはなくならないので、完治する病気ではありません。でも定期検査を受けながら、仕事ができるようになるまでに回復しました」
当時はB型肝炎への偏見があり、差別を受けることもあったという。
「めったなことで感染するウイルスではないのですが、『うつるからプールに一緒に入らないで』と言われたり、握手を拒否されたり。でもそれで落ち込むのではなく、胸を張って生きよう、間違いを正していこうという気持ちになり、正しい知識を広めるために『いっしょに泳ごうよ』(集英社)という本を出版し、講演会も行うようになりました。当時交際していた夫やファンの方の支えもありがたく、命の大切さもあらためて実感できました。今となっては病気は私にとって必要な経験だったとも思います」
10年前には膠原病を発症し、投薬で症状を抑えている状況だ。
「最初は指が腫れて原因がわからなかったのですが、血液検査をすると膠原病と診断されました。この病気は唾液が出なくて口が渇いたり、目が乾燥したり、関節痛や疲労感、その他全身のさまざまな症状があるのですが、B型肝炎と同様、完治することはありません。それでもアルバムを出して、コンサートもできているので、歌えることに感謝する日々です」