43年たっても『哀愁でいと』で 「I SAY!」
──今は年末のディナーショーの準備中ですか?
「うん。11月までは全国ツアーをやってたし、1年間ずっと動いているよ。自分でも本当にタフだなって思うしね。ちょっと自慢話をさせてもらうとデビューから40年以上、毎年必ずシングルをリリースしてきたっていうのと、毎年ちゃんとステージをやってきたっていう自負はある。
ほら、だいたい少し休んだりとかさ、いろいろあるじゃない? 女性だったら結婚したりとかね。僕はそういうのがないし、たぶん心配性なんだろうね。休んだらどうすんだって、その時間何したらいいんだろうってのもあるし」
──ほかに特別やりたいことがない?
「そうだね。可愛い子と遊ぶぐらいしか考えてないし(笑)。ゴルフもやめちゃったしなあ。
ゴルフは16〜17年前にやめた。東京からだとゴルフ場が遠いんだよ。だいたい夜中の3時4時に寝てるのにさ、6時には起きなきゃいけないじゃん(笑)」
──はたから見るぶんには、ぜんぜん心配性に見えないんですけど。
「どうなんだろうね。心配性っていうか、休むのがあんまり好きじゃない。年間のタイムテーブルとしては、だいたい夏から秋にかけて全国をツアーで回って、それが終わったらクリスマスのディナーショーの準備でしょ。もう年末からは来年にリリースする曲を仕込み始めているよ。
新曲のリリースは毎年6月が多いけど、曲を選んで、オケを作って、歌詞を決めて、レコーディングに入って、ミュージックビデオを撮って……っていうのがあるから休んでいる暇がない。そういう仕事のルーティーンが決まってて消化しないと納得いかない。それはお客さんが待ってくれてるってことも含めてだけど」
──それが励みになっている。
「そうだね。やっぱりエンターテインメントってのは、みんなを明るくハッピーにして、夢を与えるものだと思ってるんで、その使命を全うしていきたいなあって。僕は19歳で『哀愁でいと』でデビューしたけど、43年たってもいまだに『哀愁でいと』で “I SAY!” って言ってて。“ハッとして!” って言って、“1本でも妊娠、ニンジン” とかね(笑)。それが僕も楽しいし、お客さんも楽しいらしいよ」
──デビュー当時に聴いていて、最近また戻ってくるお客さんもいますね。
「うん。女性のファンの方はもちろん男がすごい来るようになったんだけど、ある男のファンが “やっぱり『哀愁でいと』聴きたいんですよ”って言ってくれたの。『哀愁でいと』を聴いてると涙が出てきて、自分が中学生の頃の気持ちに戻るんだって。中学の時に付き合ってた彼女が俺のファンで、すげえ頭にきたとか。夏休み終わったら田原俊彦の下敷き持ってたとか、めちゃくちゃ目のカタキにしてたらしいんだけど(笑)」
そういうフラッシュバックじゃないけど、パーンと一瞬で戻るみたいね。それがやっぱり昭和の歌の強さだよね。そのぐらい、みんなの脳裏に強く焼き付いている。それが青春の多感な時期に聴いた音楽だったらなおさらでしょ? 僕らも百恵さんの歌や沢田(研二)さんの歌を聴いてしびれてた。今でもカラオケで、パッと歌えちゃったりする。それと同じ感覚だと思うんだけど、その男性のお客さんに気づかされたね」