群馬県内福祉事務所(市部)保護の申請、開始等の状況 出典/生活保護情報グループ作成
群馬県内福祉事務所(市部)保護の申請、開始等の状況 出典/生活保護情報グループ作成
【表とグラフ】明らかに異様、保護率が急激に下がっている桐生市

 群馬全体で却下・取下げ率は高いが、桐生市はその中でも抜きん出ている。保護申請者の少なさにも目を見張る。これだけ少ないのなら、却下・取下げをされた30世帯の却下理由を一つひとつ調べることは容易いことだろう。

 却下は適正だったのか、取下げは強要されたものでなかったか、調査する必要がある。

 それにしても群馬県全体の保護申請者数の少なさにも愕然とした筆者は、厚労省が発表している令和3年の都道府県別保護率を調べてみたところ、他都道府県に比べて群馬はやはり低くて0.77%(全国41位)、全国の保護率平均1.63%の半分以下だった。

新たなる被害者、1週間に1万円

 桐生市の対応が可視化されたのち、新たに週1万円しか支給されなかったケースが発覚した。この男性も50代、今年6~10月に週払いで分割支給を受け、1か月当たりの総額は支給決定額の半分程度だった。

 仲道氏によれば、この男性の部屋は窓ガラスが割れて、給湯器も壊れていてお湯が出ない状態だったという。桐生市はその修理費を「出ない」と虚偽の説明をしていた。男性は、サッシに段ボールを貼って凌いでいたが、最近は朝晩の寒暖差が厳しい。夕方になると段ボールを貼った窓から冷気が忍び込んで部屋全体を冷やした。この方も仲道氏が介入したことで、未支給分が一気に支払われた。

 群馬司法書士会にはその後も相談が入り続けており、当会では事案の詳細の把握に努めている。前述の二人の男性は現在、弁護士と相談して国家賠償請求訴訟を検討しているという。

 11月30日、荒木恵司桐生市長はコメントを出し「市民の皆さまに多大なるご迷惑、ご心配をおかけしたことを深くおわび申し上げます」と謝罪した。しかし、当事者に謝罪や面会をしたわけでもなく、事実の検証を約束したわけでもない。

 桐生市や近隣地域で同様の対応をされた方、申請を却下されたり、取下げを強要された方たちは、群馬司法書士会の無料電話相談を活用してほしい。桐生市のしたことは私たちみんなの「生存権」を脅かす対応だからだ。

 誰も好んで生活困窮するわけではない。生活保護を受給して嫌がらせを受けるいわれもない。桐生市の対応改善のために当事者の方々と一緒に声を上げていきたい。


小林美穂子(こばやしみほこ)1968年生まれ、『一般社団法人つくろい東京ファンド』のボランティア・スタッフ。路上での生活から支援を受けてアパート暮らしになった人たちの居場所兼就労の場として設立された「カフェ潮の路」のコーディネイター。幼少期をアフリカ、インドネシアで過ごし、長じてニュージーランド、マレーシアで働き、通訳職、上海での学生生活を経てから生活困窮者支援の活動を始めた。『コロナ禍の東京を駆ける』(岩波書店/共著)を出版。