コロナ後遺症の正確なメカニズムはまだ解明されていないが、新型コロナウイルスによる組織障害、血栓形成、免疫系の過剰反応、自己免疫、神経系の異常などの要因が関与するとされている。
後遺症のリスクは新型コロナ感染が重症化するほどあがり、重症化もしやすい。したがって、後遺症対策となるのは、重症化を防ぐ治療薬とワクチンが挙げられる。
治療薬については相反する研究結果が発表されている。薬の投与により重症化は予防できるが、後遺症を防げるかどうかは明らかではない。
そうなるとワクチンだが、これについては「後遺症予防に有効」というのがコンセンサスになりつつある。
後遺症の予防に有効なものは?
昨年3月、筑波大学の研究チームが、ワクチン接種と後遺症に関するメタ解析の結果を『ワクチン』誌に発表している。メタ解析とは、過去に発表された研究結果をまとめたもので、臨床医学では、最もエビデンスレベルが高いとされている。
この研究では、未接種者と比べ、2回接種者では後遺症の頻度が38%低かった。
3回目以降の追加接種の有効性についての情報は限られているが、有望とするものが多い。昨年11月、スウェーデンの研究チームが『イギリス医師会誌(BMJ)』に発表した研究によれば、コロナ後遺症はワクチン接種回数が増えるほど発症が減っていた。予防率は1回接種で21%、2回で59%、3回で73%だ。
後遺症予防の観点から、どの程度の接種回数が必要かは明らかではない。ただ、日本の高齢者は、最大7回コロナワクチンを接種しており、後遺症予防という意味では十分だろう。
問題は、少なくとも3回の接種を済ませていない人たちだ。3月末までは公費で打つことができる。JN.1対策も含め、早めに接種することをお勧めしたい。
以上がJN.1で筆者が重要と考えるポイントである。
JN.1は基本的に軽症だが、感染力は強い。本来、今の時期であれば新型コロナの流行は収束に向かっているはずだが、この流行はもう少し続きそうだ。換気、手洗いなど感染予防に努めるとともに、最低3回のワクチン接種を済ませていない方は、後遺症対策のためにも早急に接種をお勧めしたい。
上 昌広(かみ まさひろ)Masahiro Kami
医療ガバナンス研究所理事長
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。