9人連続の女性皇族
佳子さまが学習院初等科に入学した年。'01年12月1日、天皇、皇后両陛下(当時は、皇太子ご夫妻)に長女、敬宮愛子さまが誕生する。両陛下にとって待望の長子だった。国民も盛大に祝福した一方で、秋篠宮さまの妹である黒田清子さんが1969年4月18日に誕生して以来、9人連続の女性皇族であることが、皇位の安定的な継承に不安を残した。
国民の間で、秋篠宮ご夫妻にも男子誕生を願う声が高まる一方、この状況を踏まえ政府は、皇位継承者を「男系男子」に限るとする現行の皇室典範を見直すための準備作業などに取りかかった。記者会見は、秋篠宮さまの考えを直接、本人に確かめることができる貴重な機会である。
'02年11月の誕生日会見で、記者たちから「答えづらいというところもあると思いますけれども(略)、3人目のお子さまの話を、もし可能であれば」と尋ねられた秋篠宮さまは次のように答えた。
「非常に答えづらい事柄ですけれども、確かに子どもたちが妹なり弟なりがいて、何かその世話をしてあげたいという気持ちがあるような印象があります。どうですか?」
と隣に座る紀子さまに問いかけつつ、
「今後のことはまた相談をしながらということでしょうか」
と述べるにとどまった。翌'03年11月にも「3人目のお子さまについてのお考えをぜひ、お聞かせください」などと繰り返し聞かれたが、答えは「3人目の子どもについては去年と同じ状況で、新たにお話しすることは今のところありません」と素っ気ないものだった。
'05年11月の会見では「現在、皇室典範の改正をめぐる議論が進んでおり、眞子さま、佳子さまも将来、皇族のお立場が続く可能性もあります。そうしたことも踏まえ、お2人のお子様の教育方針についてもお聞かせください」と、記者たちから尋ねられた。秋篠宮さまは、「今、皇室典範の論議がなされておりますが、娘たちには、もちろん今の自分たちの立場を自覚してもらうことは大事なことだと思っておりますけれども、基本的には今までお話ししてきたようにそれぞれの個性や関心事を伸ばしていってくれたらいいと思います」とのみ答えるにとどめた。
1人の小学生の女子であると同時に、内親王という公的な立場にもある佳子さまは、政府や政治の思惑の中で揺れ続けた。佳子さまは自分の将来が、大人たちによって、自分の手の届かないところで決められてしまうのではないかという不安を小さいながら感じていたのではなかろうか。彼女のこうした葛藤は、弟の悠仁さまが生まれたことで、ひとつの大きな区切りを迎えることになる。
<文/江森敬治>