残された選択肢は「全摘出」か「全摘出+再建」の2つ。すでに手術日は決められている。
「知人にやはり乳がんの全摘経験がある女性がいて、相談に乗ってもらったんです。するといきなりトイレに連れていかれて、脱いで胸を見せられて。私自身そのときまで知らなかったけれど、彼女は両胸を全摘していた。それでも彼女は『命と比べたら大したことない。実際に取っても大丈夫よ!』と言う。その元気な姿に、カッコいいな、生きていくってこういうことかと……」
今の自身の姿を残そうとセミヌード撮影
力強い言葉に背中を押され、まずは全摘を決意。医師には同時に再建手術もすすめられたが、「再建は80歳になってからでもできる。今はとりあえず自然体でいよう」と、手術に向け気持ちを切り替えていった。
今の自身の姿を残そうと、手術の1週間前、写真撮影に臨んだ。プロのカメラマンとヘアメイクのもと、セミヌードをカメラに収めた。
「できあがった写真を見て、素直に“きれいだな、撮ってよかったな”って思いました。そこからはもう何の迷いもなく、先生にすべてお任せしよう、と思うようになりました」
当初の予定どおり、告知翌月手術を決行。入院中はやはりつらい時期もあった。決意したとはいえ、心境は複雑だ。
「手術直後は怖くて見ることができませんでした。経過観察で先生には毎日見せるけど、私自身はどうしても無理だった。3日目にようやく見たけれど……。もう現実を受け止めるしかないですよね」
入院は1週間で、レギュラー番組も休むことなく、早々に現場復帰を叶えた。全摘の半月後には温泉に出かけたというから驚かされる。
「早く日常に戻りたいという思いがあったので。最初は怖かったけれど、誰も私の裸なんて見てないだろうと開き直っていましたね。先生にも珍しいねって言われました(笑)」
と、あくまで前向きだ。
しかし、翌年、乳がんが再発。浸潤がんの局所再発との診断だった。全摘後に再発するケースは珍しく、1%の確率とされている。このとき初めてセカンドオピニオンを受けることを決めた。
「先生に不信感を持っていたわけではないけれど、一人の先生の意見だけでいいのかなと。先生に“セカンドオピニオンを受けてもいいですか”と正直に言ったら、先生も“ぜひ受けてください”とすすめてくださいました。最終的に主治医とセカンドオピニオンの先生の意見がほぼ一緒で、そこで納得できました」
2019年春、2度目の手術。部分麻酔で、意識がある中での手術だった。
「なので全部聞こえていて。“メス”って本当に言うんだ、なんて思ってましたね(笑)」
手術は無事成功し、その日のうちに帰宅を許された。当時の心境をこう話す。
「1回目の手術は初めてのことだらけでしんどかったけど、そのときは前年の全摘の経験があったので。そこを乗り越えたらあとはもうへっちゃらというか(笑)。経験が人を強くするって本当ですね」