挑戦は終わらない。さらなる高みへ─

巧みな話術で取材陣を阿部ワールドに引き込む阿部さん。「リポーターが来た、ではなく阿部さんが来た、って言われたい」
巧みな話術で取材陣を阿部ワールドに引き込む阿部さん。「リポーターが来た、ではなく阿部さんが来た、って言われたい」
【写真】「相当モテた」大学時代の阿部祐二がイケすぎ

 誰よりも早く、誰も見たことがないことをスクープし続け、他の追随を許さない存在になった阿部。だが、“自分もやれる”と感じられるようになったのは、ここ5年くらいだという。ちょうど『スッキリ』の後期、ほんの最近のことだ。それはまさに日々の勉強のたまもの。

 リポートでは毎年、違う表現にすることを自らに課している。桜に関する本は岩波新書からハードカバーまで、本屋で片っ端から購入し、使えそうな表現をピックアップ。絶対にほかのリポーターが言わないようなことを随所に入れようと意識している。

 また食リポでは“おいしい”とは言わない。おいしいのは当たり前だから、違う表現を常に考えている。

 最近は、『ゴゴスマ』で昼の顔としても定着してきた。

「『昼間に見てますよ』と声をかけてくれる人も出てきて、うれしいですね」

 声をかけられるといえば、前出の井内さんからこんな証言も。

「地方で阿部が歩いてると、事件だと思われるんですよね。映画の撮影で来たのに、『何かあったんでしょ? 教えてくださいよ』って(笑)」(井内さん)

 これには阿部も「よっぽど事件をやってたんだねえ」と苦笑する。

 最近、ハマっているのは韓国語の勉強。韓国関連の仕事が決まっているわけではないが、いつかやりたいと猛勉強中だ。今では字幕なしで韓国ドラマを見ても、だいたいわかるようになったというからすごい。

 これからやっていきたいことは、ほかにも山ほどある。

「いじめや虐待、少年犯罪などの社会問題は、いつもやりたいと思ってます。児童相談所にも関わってきたし、拘置所にも何回も行っていて、実は得意分野なんですよ。あと、国際政治の勢力均衡が大学時代からの専門なので、政治もやりたい。ただ、これはリポーターの出番がないからなあ」

 コメンテーターとしての顔もいつか見てみたい!

 66歳になった現在も、知力、体力、気力、すべてフル満タン。

 まさ子さんに家での様子を聞くと、

「小さなジムをつくってエアロバイクやダンベルトレーニング、筋トレなどをしたり、ゴルフが好きだから短いクラブで素振りをしたりしてますよ。四六時中、何かやっていて、静かだなと思うときは寝てるとき(笑)」

 と、ほのぼのする様子を教えてくれた。

 井内さんは、「阿部がやめたら、リポーターという職種がなくなってしまうのではないか」と語る。

「昔はひと番組に10人くらいリポーターがいたけど、今はリポーターがいない番組もある。そうすると現場とスタジオのやりとりで生まれる臨場感やナマ感が出ないじゃないですか」(井内さん)

 そう、だからこそ私たちにはまだまだ“事件です!”が必要だ。AIがリポートやニュースを流暢に読めたとしても、生の声にはかなわない。

「はっきり言って、リポーターは絶滅危惧種で、消えてしまうかもしれないと思っています。

 でも俺は、“この人が伝えるから見たい”と思われるようになりたい。それはテクニックではなくて、マインド。悲しい事件でも楽しい話題でも、基本にあるのは“人に聞く”ことで、いかに相手の気持ちに寄り添って思いを引き出すか、だから」

 ほかとは一線を画した唯一無二の存在として、“されどリポーター”を確立したい─。常に一番を目指してきた男は今、自分史上最高の一番を求め、さらなる頂点へと走り続ける。

<取材・文/今井ひとみ>

いまい・ひとみ ライター。エンタメ誌編集部、「週刊女性」編集部を経てフリーに。多くの著名人の取材、人物ルポをこなす